研究課題/領域番号 |
15K01745
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
川端 美穂 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (00399221)
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研究分担者 |
木村 彰子 札幌国際大学, 人文学部, 講師 (70713139)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 保育実践 / 他者とのつながり / 間身体性 / 間主観性 / 二者関係 / 関係の網の目 / 自己の可能性の認知 / 参加の構え |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、就学前教育における「他者とつながる」経験の蓄積が就学後の学校生活とどのようにつながるのかについて、具体的なデータによって示すことにある。 平成29年度は、以下の3点を推進した:(1)5歳児の集団活動(主に運動会と生活発表会)に関わる保育状況の観察と保育者へのインタビュー、(2)前年度に収集した事例に関する保育者・教師への聞き取りとカンファレンスの開催、(3)研究協力フィールド(幼稚園・認定子ども園・小学校)における対象児の追跡観察である。 (1)においては、5歳児に焦点を当てて、運動会および生活発表会という二大行事への取り組み過程について、活動中の子どもの変容と、子どもへの働きかけの意図などについて、保育者を対象に半構造化面接を行った。(2)においては、各事例の幼児の行為や発話の意味について、保育者に聞き取りを行いながら、実践者と研究者の対話をとおして事例の解釈を行った。またティーム保育の協働のあり方についても保育者に聞き取りを行った。(3)においては、特に前年度の観察対象幼児が小学校入学という環境移行をどのように経験しているのかについて、「生活」の授業及び休み時間の行為・発話や相互作用を記録した。これにより、幼児同士の関係性の変化、保育者の援助の影響、集団保育場面における他者との間主観的・間身体的かかわり合いの経験が就学後の学校生活にどのようにつながるのかについて一定の検討を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、幼児・児童の他者とつながりを分析する視点として、前年度までにある程度定めた「間主観的かかわり・間身体的かかわり」という研究視点に加えて、また、集団としての変容と個としての幼児の変容のかかわりを掬い取るために「関係の網の目」という新規の視点も取り入れながらより具体的な研究展開を行うことができた。当初の予定では、当年度は小学校の生活の授業中の相互作用に焦点化して調査していく予定であったが、前年度の調査を受けてより広い視野で観察指標を求め、休み時間における他児や教師とのかかわりについての事例を収集した。結果として、調査期間が当初の計画より延びることになったが、幼児期から児童期にまたがって対象児が「他者とつながる」経験を相手とともに創り出しているプロセスを追うことができた。以上により、研究課題全体に対する進度としてはおおむね順調に進展しているという自己評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の特色は、幼児教育と就学後の教育に関わる、研究者・保育者・教師のサポート・ネットワークを形成し、互いの教育の内容と意義を共通理解し、実践を支えあうための理論的・実践的条件整備を行うことにある。従って、最終年度は次の点を実現する必要がある。(1)個々の保育者の「技」に支えられている保育の実践知を共有するためのカンファレンスの開催、(2)保育と小学校教育の接続について、現場の保育者や教師による問題意識を実践研究につなげる勉強会の立ち上げ。これらを軸に、これまでの成果をまとめ、成果報告書を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでに幼稚園及び小学校で収集した事例の了解可能性を担保し、メタ観察(=考察)の説得性を高めるとともに、実践を支えあうネットワークを形成する目的で、保育者・小学校教師がともに参加する事例検討会の開催を計画していたが、参加者のスケジュールが合わず実現できなかった。このため、平成30年度に開催することとし、研究費の残額はこの開催費用にあてる。
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