近年、過度な運動による小児の運動器障害・疾患の増加が問題視されている。成長期の運動器障害・疾患は、骨端線閉鎖前後で特徴が異なり、発達段階に合わせた対応が必要である。そこで、成長期の骨発達の実態を明らかにするために、A県内の小・中学生を対象に運動器検診を実施した。 検診は、平成27年10月にB小学校6年生、12月にC中学校1~3年生、平成28年3月にD小学校3~5年生、平成29年3月にD小学校3~5年生の計4回実施した。実施者は、整形外科医、臨床検査技師、理学療法士、トレーナー、看護師、誘導担当の9~10名で、内容は、1.事前アンケート(学年、性別、スポーツの状況、骨・関節の痛みや部位)、2.上下肢の運動器機能チェック(学校運動器検診の手引きを参考に、歩行、片脚立ち、しゃがみ込み、前屈などの8項目)、3.超音波検査(痛みがある部位および脛骨骨端部の発達段階および骨端線閉鎖状況、軟骨厚)、4.診察(痛みがある部位および膝の圧痛の有無)とした。また、児童・生徒、保護者、学校責任者の許可を得て、過去3年間の身長・体重のデータを収集した。 平成29年度は4回の運動器検診のデータ分析を行った。その結果、小学生では、5~6年生に成長のスパートを迎え、その時期に脛骨の骨発達が変化することが明らかになった。骨発達は男子より女子が約1年半以上早く、軟骨厚には性別、体格、スポーツ時間が影響する可能性が示唆された。中学生では、骨端線閉鎖がみられた割合が、中学3年生において男子では2割、女子では8割以上と差があり、体格が大きい人、スポーツ活動をしていない人、骨・関節の痛みがない人に骨端線閉鎖の割合が高かった。 成長期の運動器障害を予防するためには、骨発達に合わせた男女別の運動プログラムを提供し、学校現場で保健指導を行う必要がある。
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