研究実績の概要 |
本研究は、自発的に動き回ることで環境との出会いを調整し始める時期として乳児の移動開始期に注目し、周囲との出会いの質的な変化を「遊び始める場所」のアフォーダンス分析によって明らかにすることを第一の目的、そこから得られた知見を保育環境デザインに援用可能な事例集として集約することを第二の目的としている。こうした目的のために、本研究ではジェームズ・ギブソン(1979)のアフォーダンス理論に依拠しつつ、建築家クリストファー・アレグザンダー(1977)の環境設計単位である「パタン・ランゲージ」を援用することで、「場所」を生活者にとっての基礎的な単位として設定し、その心理学的な性質の解明を試みる。H30年度は、これまでに検討してきた分析枠組みに沿って、取得した「遊び始め場面」データの分析を完了するとともに、最終的な「パタン・ランゲージ」の形式に向けて取りまとめを行った。それらの成果の一部は、学会誌論文「乳児の歩き出しの生態学的検討:独立歩行の発達と生活環境の資源」(西尾ら. 2018)および図書「身体とアフォーダンス : ギブソン『生態学的知覚システム』から読み解く」(染谷ら, 2018)として公表された。また、最終成果物としての「保育環境のパターン・ランゲージ事例集」の作成および公刊に向けて、野中哲士氏(神戸大学)、青山慶氏(松蔭大学)、山本尚樹氏(立教大学)、山崎寛恵氏(お茶の水女子大学)、西尾千尋氏(東京大学)らの協力を得て多摩美術大学上野毛キャンパスにて検討会を開き準備を行った。
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