本研究課題の三年目にあたる2017年度は、前年度実施の質問紙調査結果(601施設に郵送、回答を得られた197施設について分析)をさらに精査し、児童養護施設における就学支援の現状と課題、ニーズを明らかにした。調査結果は、日本学校心理学会第19回つくば大会(2017年9月16日~17日、於筑波大学)で発表を行った。以下は、調査結果の概要である。 ①塾等の学習の機会は準備されてきており、特に中学生では、約8割の施設が塾等を利用していた。ただし、施設規模による利用の差が見られた。②児童の進路決定を支援する為に職員が大切にしている事柄として、「お金があまりかからないこと」「幅広い知識や教養を身につけることができる」が上位に挙がる一方、「児童の希望や意向が尊重されること」「児童が目標を持てるよう支え励ますこと」が最も低かった。③職員が認知する進路支援上の困難として、児童との関係を継続できないこと(児童の突然の措置変更、職員の配置換えや離職)が上位に挙げられた。④入所児童の大学等の中退について、44.7%の施設が「経験ある」と回答した。中退後に苦労したこととして、「奨学金を返済しなければならないこと」「別の大学や専門学校に進学するお金がないこと」「住む場所が確保できないこと」が上位に挙げられ、児童養護施設出身学生の退学後の厳しい生活状況が明らかになった。⑤児童養護施設退所後に必要な支援としては、「生活や就学のための経済的補助」「低い家賃で住めるところ」「進路や生活について、なんでも相談できる人」など、経済的支援と人的支援の両方が上位にあがった。 児童養護施設にある児童の希望や意向を進路決定に生かすことができないという現実は重く、子の最善の利益を実現するための継続性のある支援が求められる。また、進学後の児童を支えるために、児童養護施設に留まらず、学校・大学関係者の理解と援助が求められる。
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