本年度は、研究の最終年度で、前年度調査済みの同一コーホート集団に対するレジリエンシー、スクール・エンゲイジメント、学校環境適応感尺度アセス(栗原ら、2010)を用いた質問紙調査、調査協力者への面談調査を基に,改めて調査対象コーホートの3年間の変化とレジリエンスの状況について、調査協力者に面接調査を行なった。半構造化面接の方法を用いて、3年間の変化の様子発達の具合、レジリエンスの実現状況について調査を行なった。 また、これまでの調査により関連が推察された「スクール・エンゲイジメント」とレジリエンスの関係を検証するために、中学生用スクール・エンゲイジメント尺度を開発した。中学生用スクール・エンゲイジメント尺度は、「認知的エンゲイジメント」「感情的エンゲイジメント」「行動的エンゲイジメント」の3つの因子より構成された。中学生用スクール・エンゲイジメント尺度を用いて中学生の生活満足感とストレス反応をレジリエンスの状態とみなし、レジリエンスとスクール・エンゲイジメントの関連を検討した。結果、スクール・エンゲイジメントと生活満足感の間に有意な正の関連が、また、スクール・エンゲイジメントとストレス反応の間に有意な負の関連が確認された。 さらに、スクール・エンゲイジメント状態の違いによるレジリエンスへの影響を把握するために、クラスター分析を用いて、スクール・エンゲイジメント3因子及びレジリエンスの状況が異なる6つのグループを見出した。また、スクール・エンゲイジメントの3因子の状況の差異により、生活満足感やストレス反応に違いが見られたことから、スクール・エンゲイジメントの3因子の状況の違いがレジリエンスの形成に影響を及ぼしている可能性が見出された。 本年度の研究の成果として、「生物・心理・社会モデルによる理解と学校教育への適用」を鳴門教育大学研究紀要に発表した。
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