研究課題
今まで父親の養育不安について,その特徴を適切に測定する尺度がなかったため,新たな養育不安尺度を作成するため調査研究を行った。研究は2段階を経て行われた。まず,父親の養育不安の基礎的資料収集のため自由記述による調査を行った。基礎資料から収集した点が本研究の第一の重要な特徴である。最終的に,1286人の子どもを持つ父親が対象者であった。続いて,自由記述調査をもとに評定尺度を作成し調査を行った。対象者は719人であった。評定尺度を用いた調査については分析中であり,以下は自由記述データの結果である。本研究の第二の特徴は対象者の範囲を拡大している点である。母親の育児不安研究が就学前の子どもの母親を対象とするものが殆どであることに対して,父親の場合は子どもとの関わり方を考え,対象者を就学前だけでなく小学校低学年,高学年の子どもの父親とした。さらに,山際他(2014)などにおいて,職業や収入等の父親の社会的背景の影響を強く受けることが議論されていることから,給与所得者だけでなく,自由業・自営業等の父親も含めている。主な結果として,父親の養育に父親の社会的背景が影響していることと同じように,父親の養育不安の内容も社会的要因に関わることが多かった。これは,母親の育児不安では,子育てのやり方や子どもとの直接的相互作用の中で生じる不安が主である点と異なっている。父親の養育不安は,子どもと父親を取り巻く社会的・行動的環境の影響が強いことが実証された。また,たとえば子どもの発達段階と養育不安の関係をみると,発達にともなって増加するもの,減少するもの,コンスタントに出現するものというパターンがあった。それぞれの発達段階において,子どもと親の社会・行動的環境の影響が発達段階と関連することが示唆された。
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首都大学東京 人文学報
巻: 514 ページ: 11-16