研究実績の概要 |
「学習環境文化尺度CLEQ: the Cultural Learning Environment Questionnaire, Fisher & Waldrip, 1999」(以下,CLEQと記す)の日本語版を作成した。CLEQは,多文化共生社会に加速して進む可能性が指摘されるわが国の社会的状況を鑑み,今後,日本でも有効利用できる可能性のあるツールである。多文化・多民族国家のオーストラリアで開発されたCLEQを構成する35項目は,国民文化を測定するHofstede(2010)の4次元を基盤に作成され,下位次元の少なくとも1つ以上は,Moosの基本的社会環境3次元のいずれかに該当するよう設定されている。 首都圏公立A中学校の全校生徒を対象に調査を実施した。試作した日本語版学習環境文化尺度50項目の因子的妥当性を検討するため,実施データを用いて因子分析を行い,7因子34項目を抽出した。日本語版CLEQの7因子について,個人属性(学年)間の比較を行った。結果,第2因子【競争と協調】,第6因子【模範】以外のすべての因子で学年間に有意差が認められた。第1因子【協働学習】,第3因子【教師の権威】,第4因子【共感と調和】,第5因子【学校と家庭教育の一致】,第7因子【男女平等】のいずれの因子においても,第1学年の子どもたちの評価値が有意に高く,現在の学級環境の文化的特徴に対して,有意に肯定的な評価をしていることが示された。学年間の比較の他,性別,学級,部・課外活動の参加経験,人間関係や学業成績への自己評価等の個人属性間においても,複数の因子で有意差が認められた。
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