研究課題/領域番号 |
15K01772
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研究機関 | 東京家政大学 |
研究代表者 |
岩崎 美智子 東京家政大学, 家政学部, 教授 (90335828)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 児童養護施設 / 施設生活 / かつての子ども / 施設職員 / ライフストーリー・インタビュー |
研究実績の概要 |
初年度である平成27年度は、愛情のネットワーク理論の先行研究を整理したうえで、戦後沖縄において社会的養護を受けた「かつての子ども」を対象としたライフストーリー・インタビューを行なうことをおもな目標とした。対象者たちが施設で生活していたときの時代背景や沖縄の社会的出来事を確認してインタビューに臨んだ。沖縄本島各地と離島、本土に在住する30代から50代の児童養護施設卒園者男女10名~20名程度のインタビューを予定していたが、対象者の選定作業が難航した。卒園生を紹介してくれた元施設職員と連絡のとれる該当者が少ないうえに、諸般の事情からインタビューを辞退されるケースもあって、最終的には、1回目のインタビューを6名に、昨年度に引き続いての2回目のインタビューを6名に実施した。 1回目の聞き取りでは、施設生活全般について子どもの視点から回想してもらい、2回目の聞き取りでは、施設卒園後に直面した困難や、心配事の相談相手、人生の転機などについて語ってもらった。 昨年度実施した1回目のインタビュー・データに基づいて、子どもにとっての施設生活の意味―施設生活で得たものと、施設生活による弊害―を検討し、研究協力者とともに、ワシントンDC(アメリカ合衆国)で開催されたOMEP(世界幼児教育・保育機構)第67回世界大会においてポスター発表を行なった。また、その発表内容と関連して、E・ゴフマンの理論をてがかりに、集団生活における規則や職員による統制、子ども同士の暴力や、無力化・退所への不安といった、施設生活のもたらす負の側面を考察した論文を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の主たる目標であったライフストーリー・インタビューは実施できたものの、予想されたことではあるが、協力者探しが難航した。現在児童養護施設で生活している人に調査への協力を依頼するのとは異なって、卒園後10年以上も経って連絡が取れる人の数は限られている。また、調査が個人のプライバシーに深く踏み込む内容を含んでいるため、当然ながらインタビューに答えることにためらう人もいた。そのため、協力者を出身地域別(沖縄本島北部・中部・南部)に募ることはあきらめ、離島・他県在住者へのインタビューも少数にとどまることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
2年目である平成28年度には、さらに協力者を募る努力を続けるが、協力者数の拡大は困難が予想される。すでにインタビューに協力していただいた対象者から新たな協力者を紹介してもらうなどの方策を考えるつもりである。また、社会的養護を受けた当事者だけでなく、元施設職員や当時の児童福祉状況をよく知る元児童相談所職員等関係者にも対象を広げて、聞き取り調査をおこなう予定である。 インタビュー調査とあわせて、愛情のネットワーク理論を精査して、かつての子どもたちの人間関係の要因分析に着手するとともに、彼らが施設生活を送っていた1970年代~90年代の社会・経済状況と沖縄の福祉データ・資料の収集に努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
インタビュー協力者数が予定よりも少なかったため、交通費・謝金等が予定額を下回ったのがおもな理由である。また、海外での研究成果発表にあたっては、所属大学内の海外研修補助費を受けることができたため、旅費をおさえることが可能になった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度にくり越すことができた予算は、追加調査と資料収集のための旅費として支出する。また、調査データのまとめや研究成果発表の際の正確さを期するため、インタビュー・データのトランスクリプト作成の謝金やプロの翻訳業者への外注費用として使用する。
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