最終年度である平成29年度は、6月にクロアチア・オパティアで開催された第69回OMEP(世界幼児教育・保育機構)世界大会において、研究代表者の岩崎と研究協力者の松本とがポスター発表を行なった。岩崎は、児童養護施設退所後に自立した生活を営んでいる20代から50代までの成人男女17人のデータを分析し、頻繁ではなくても継続的な関わりを友人や施設職員と続けていくことの重要性や、女性は施設在園中からの友人との関係が、男性は地域や職場で自己の有用性を認められたり配偶者と安定した家庭生活を送っていることが自立を促していることを、愛情のネットワークの視点から論じた。松本は、「里子の村」と呼ばれる戦前の社会的養護の盛んな地域の事例を、里親と里子を取り持つ仲介者・助言者の存在と、里子を特別視しない地域住民の見守りの態度に着目して報告した。 8月には、沖縄県の宮古島において、守姉と呼ばれる民間伝承型アロケアについて確認することができ、11月には、沖縄市において児童養護施設元職員に聞き取りを行なって、自立を支援する側の経験と意識を検討した結果、施設卒園生との共通性と相違点が明らかになった。 代表者の岩崎は、施設卒園者へのインタビューデータに基づく分析を継続中で、論文執筆の準備を進めている。研究協力者の松本は、アロケアの理解や浸透につながる可能性が高い「養護性」形成に関する論文を執筆した。社会的養護とは異なるアロケアの形態や機能に関する研究の端緒がみつかったことは、今年度のひとつの収穫といえるだろう。
|