研究課題/領域番号 |
15K01776
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研究機関 | 鎌倉女子大学 |
研究代表者 |
飯村 敦子 鎌倉女子大学, 児童学部, 教授 (70326982)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ムーブメント教育 / 子育て支援 / 有効性 / 養育者 / 気分 / 影響 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、乳幼児とその母親を支えるムーブメント教育による子ども・子育て支援プログラムを開発・適用すると共に、母親と子育て支援者のエンパワメントという視点からその効果を検証することである。 平成27年度は、ムーブメント教育による子育て支援が養育者にもたらす影響を明らかにするために、家族参加型支援である「親子ムーブメント教室」に参加した養育者を対象にムーブメント活動に参加する前と参加した後の気分変化について明らかにした。その結果、養育者は子どもと共にムーブメント活動に参加することで「緊張-不安/抑うつ-落ち込み/怒り-敵意/疲労/混乱」という陰性気分が有意に低下し「活気」という陽性気分が有意に上昇すること、また、養育者の陰性気分の低下並びに陽性気分の上昇という変化は、子どもの年齢やムーブメント教室への参加経験によって影響を受けないことが示された。さらに、親子ムーブメント教室の終了時に実施される「活動の振り返り」における養育者の発話内容の分析を行った。分析にあたっては、ムーブメント教育の基軸となる「身体性/発達性/環境性/関係性/遊び性」のキーワードをもとに逐語録から抽出する発話の基準を定め、関連する発話を抽出した。養育者の発話からは「楽しかった、嬉しかった、よかった」という「快の気持ち」を表す発話が最も多く抽出され、各回の発話全体の30%を占めた。また、すべての回において、前述の5つのキーワードに合致する発話が抽出された。なかでも活動時の子どもの姿に対する新たな発見や子どもの変化を捉えた「発達性」に分類される発話が増加することが明らかになった。 以上の結果から、ムーブメント教育による子育て支援は、養育者の陰性気分を低下させ陽性気分を上昇させること、また、子どもの強み(ストレングス)や発達変化に目を向けられるようになることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、ムーブメント教育による家族参加型子育て支援が養育者に与える影響について、養育者の気分並びに発話内容の変化という側面から明らかにすることができた。研究計画において予定していた乳幼児を持つ母親の子育ての楽しさ、充足感の実態調査を通して、子育て支援に求めるニーズを明らかにしようとする調査研究については、現在予備調査から本調査を実施する段階に至っており、概ね順調に推移している。 なお、当初予定していた英国における子育て支援(乳幼児のプレイグループ)の支援内容を明らかにする研究については、研究協力者と連携して具体的な調査を実施している。また、ムーブメント教育による子ども・子育て支援プログラムの開発については、ムーブメント教育による子育て支援を実践する地域の教室と連携して、遊具・教材・活動内容の側面から分析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、前述した乳幼児を持つ母親の子育ての楽しさ、充足感の実態調査による子育て支援ニーズに関する本調査を実施して結果分析を行う。 さらに、ムーブメント教育による子ども・子育て支援プログラムの開発に向けて、英国における子育て支援(乳幼のプレイグループ)に関する調査結果をまとめた上で、本研究で実践する子育て支援プログラムに反映させる。なお、本研究で開発、実践するムーブメント教育による子育て支援プログラムを一層充実させるために、動的環境を用いた子育て支援を展開する豪州の乳幼児子育て支援の現地調査を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、平成27年度に英国における子育て支援の具体的方法と活動内容について現地調査を予定していたが、本年度は現地研究グループと連携して研究を進め、現地調査の調整を行ったためである。また、国内調査研究に伴う研究旅費については、研究代表者が現地に移動して行う研究打合せ回数が当初の予定より少なかったことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
英国の現地調査については、調整ができ次第実施する予定である。さらに、ムーブメント教育による子ども・子育て支援プログラムを一層充実させるために、動的環境を用いた子育て支援を展開する豪州の乳幼児子育て支援に関する現地調査を予定しており、次年度に使用する計画である。
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