本研究の目的は、乳幼児とその母親を支えるムーブメント教育による子ども・子育て支援プログラムを開発適用すると共に、母親と子育て支援者のエンパワメントという視点からその効果を検証することである。 平成30年度はムーブメント教育による子育て支援教室において、平成29年度に開発、試案を作成した発達段階に基づくムーブメントプログラム、すなわち、0~12ヶ月児を対象としたBabyムーブメントプログラム、13~18ヶ月児を対象としたWalkersムーブメントプログラム、19~36ヶ月児を対象としたRunnersムーブメントプログラムの実践に取り組むと共に有用性を検討して改良を加えた。具体的には、養育者が家庭において活用可能とするための支援ツールの検討、並びに、地域での子育て支援教室等における活用を目指した支援ツールの検討である。これらの検討を元にプログラム集を作成した。 また、本研究の意義につながる発展的研究として、障がいのある子どもの母親5名への半構造化面接による「育児の喜び」を明らかにする研究に取り組んだ。その結果、以下の点から母親は育児の喜びを感じることが明らかになった。成長がゆっくりな分子どもの小さな成長や変化に気づけた時、出来ないことを実感する日々の中でいつの間にか出来るようになった瞬間があること、他の子どもと同じ場で同じ経験をしている時、自分は必要とされている・子どもと共に生きていると実感した時、子どものよいところや得意なことを見つけた時などである。また、自らの育児についてポジティブな側面から語ることそのものが保護者支援につながることが示唆された。 本研究を通して、子育てに不安や悩みを抱える母親の増加、少子化や核家族化に加え子どもを取り巻く問題が複雑化する中、その育ちを支える子育て支援の方法論としてムーブメント教育活用の意義が検証されたと考える。
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