研究課題/領域番号 |
15K01782
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
石井 信子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, プロジェクト研究員 (60617819)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 子育て支援 / 神経発達障害 / 心理治療 / 母子関係性 / メンタルヘルス / 乳幼児発達 |
研究実績の概要 |
この10数年の知的能力障害を伴わない神経発達障害の著しい増加の原因は、本来の脳機能の障害に加えて、養育環境などの心理・社会的に要因による不適応群の増加が一因であると考えている。現在の神経発達障害の診断では、家庭や教育現場で不適応症状を呈した子どもに対して発達検査を実施して発達に大きな凹凸が発見されると、神経発達障害の診断がつく傾向がある。しかし一般に考えられている以上に子どもは発達に大きな凹凸を持っている。この研究では、1、の横断研究で、子どもの発達像の特徴を明らかにし、2、の縦断研究で神経発達障害の特性を持つ子どもが不適応症状を起こさないための効果的な介入の在り方を志向し、心理治療の有効な手立てを探ることを目的としている。そのことが養育者への子育て支援と子どもの自尊感情の向上につながることを目指している。 1、1歳児から5歳児を対象として、保育園・幼稚園にて発達相談会を実施し、新版K式発達検査を用いて、通園している幼児の発達状態像を調査した。以下の3点に着目して、子どもの発達像を掴み、養育環境の課題を明らかにする。(1)認知面と言語社会面の発達間の顕著な差、(2)検査の上限(高い能力)と下限(低い能力)との間の顕著な差、(3)検査時と日常の行動で神経発達障害の特性が観察される。 2、3点に着目した発達像から発達に大きな凹凸があるが不適応症状を起こしてない子どもと不適応を起こしている子どもを抽出し、個別に継続している。心理治療では、詳しく生育歴やその時々の親の関わりを傾聴し、絵画法を取り入れ気づきを高めつつ、解決志向アプローチ面接・TEACCHを活用して対応している。子どもの適応力促進、養育者の子育て支援となっているとの当事者からの積極的な参加の評価を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
横断研究では、幼稚園・保育園の協力を得られ、2歳児から5歳児を対象として253人の被験者数獲得。その中で全ての検査項目実施できていたのが206人であった。予定の被験者数を獲得したので、保育園・幼稚園での相談会は終了して、3点(認知面と言語社会面の発達間の差・検査の上限と下限間の差・検査時と日常の行動観察)に着目して、内容分析を行っている。相談会の実施日が5月から翌2月まで幅があるため、例えば2歳児クラスには、2歳1か月から3歳10か月までの子どもが在籍することとなってしまうので、生活年齢毎に内容分析を行うこととした。すなわち2歳児は2歳0か月から2歳11か月とし、2- 5歳児クラスは2-6歳の年齢別に分けることとした。 縦断研究では、今年度ノースカロライナ大学のTEACCHの視察・研修に参加して個別の心理治療に活用、また総合福祉センター弘済学園の施設見学では虐待の実態を再認識して母子治療に活かすことができた。既に発達障害と診断されている5名に月2回の心理治療的アプローチを継続している。また、京都市保健センターでは10数名の発達障害児をもつ母親グループへの母親へのカウンセリングと保健師へのスーパーバイズを実践し、心理治療の有効な手立てを探る研究を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
横断研究でのデーター収集は予定の被験者数を獲得したので、保育園・幼稚園での相談会は終了した。2歳児から5歳児を対象として、内容検討する予定であった。しかし、クラスに在籍する子どもの年齢幅が大きくなり、しかも同一の生活年齢児が所属するクラスが異なるということが生じるので、所属クラス別ではなく、生活年齢を基に内容を検討することとした。4分類の予定が5分類と増えたので、2歳台と6歳台の被験者数の獲得も検討している。 縦断研究では、母子関係性の心理治療の効果的な手立てを探る研究と実践での「Plan(計画)-Do(実施)-See(見直し)」をおこなっていく。ノースカロライナ大学のTEACCHの参加は子どもにわかりやすい環境をいかに提供していくか、また弘済学園の施設見学では虐待の実態はいかに養育者の養育する力を引き出していくかの大きなヒントをもらった。 次年度は研究成果を論文、学会発表、著書に著すこと、また「Plan(計画)-Do(実施)-See(見直し)」実践を継続していくことを予定している。5月には日本集団療法学会に「9分割統合絵画法のアプローチ」を論文発表、翌3月には日本発達心理学会で「発達障害の環境要因検討と有効な心理治療の研究」研究発表、翌夏にはミネルヴァ書房から「子育て支援」の書を発表予定にしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入を委託している業者がより安い購入先を探していただいた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度物品購入に充てさせていただく。
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