研究実績の概要 |
表象の柔軟性の課題であった二重ラベルの許容の傾向は他の能力とあまり関連がないようである. 他方で心の理論と抑制制御の能力は関連していることが確認された. 語彙切り替え課題はその性質上,抑制制御課題と類似すると想定されていたが,結果は異なっていた. 語彙切り替え課題が関連をみせたのは,心の理論や他者の意図理解を必要とする見立て課題のスコアであった. 少なくとも普段から言語の切り替えをしない子どもを対象にした場合,話者に合わせて語彙を切り替える能力には情報の抑制の能力よりも他者理解や意図理解が必要であることが示唆された. これは同時に,バイリンガルの言語の切り替え経験は実行機能系のみならず他者理解と関係している可能性を示すのかもしれない.同時に今回の対象となったモノリンガルは言語の切り替え経験はないので,実行機能系は語彙切り替えとは関連がみられないのかもしれない. 今回は複数の課題を実施したことから,サイモン課題や語彙切り替え課題では試行数やブロック数を少なく設定する必要があったが,特に認知的負荷がかかるタイミングの検討とそれに応じた分析が必要である. さらに,今回は考慮しなかった月齢や語彙数といった他の能力の複合的な影響を検討する予定である.
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