研究課題/領域番号 |
15K01784
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研究機関 | 神戸松蔭女子学院大学 |
研究代表者 |
久津木 文 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 准教授 (90581231)
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研究分担者 |
田浦 秀幸 立命館大学, 言語教育情報研究科, 教授 (40313738)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バイリンガル / 幼児 / 認知 / 実行機能 / 心の理論 |
研究実績の概要 |
2018年度は、モノリンガルおよびバイリンガルデータの収集,ならびに前年度収集したデータの下分析を行った。分析の途中経過をバイリンガル関連の学会で報告し、その内容を紀要論文としてまとめた。具体的には幼少期に英語と接触した日本語で育つ幼児の二言語レベルと実行機能ならびに心の理論課題の成績の関連を検討した。その結果、英語力と心の理論課題との関連が示され、英語の語彙を学ぶことが他者理解の能力を促進する可能性が示唆された。また、英語力がとくに葛藤抑制と関連を示したことから、英語の語彙学習が認知に影響をおよぼしている可能性が見出された。しかしながら、これは途中経過の分析結果であり、より明確な結果を得るためにはモノリンガルとの比較が必要であることを強調しておきたい。また、バイリンガルの語彙発達についての分析を国内および国際学会で報告した。 昨年度までのデータの下分析の過程において、分析方法を変更したほうが良い箇所がみつかった。具体的には、語彙切り替え行動を調べる課題についてである。この課題はもともと子どもが事物の名称を話し相手によって英語もしくは日本語で言う課題であったが、モノリンガルはまずそれができないこと、そしてバイリンガルでも本研究の対象の子どもはあまりできなかったことから、日本語内で音節を切り替える課題に変更して行っていたものである。このような変更により元来の言語間の切り替え行動が計測できていない。しかし、子どもの言い間違い時の反応を見る限り、なんらかの抑制が働いているだけでなく、ターゲット反応である音節と語彙の反転の現象が年齢の低い幼児でみられやすいことから抑制ならびに作業記憶と関連する可能性が考えられる。よって、この課題についてはこの観点からのデータの再分析を行う予定であり、これまで収集したものについても同様に再分析を行うこととなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最も時間がかかり手間のかかるデータ収集がスムーズに進んでいることから「おおむね順調に進展」していると評価した。特に、幼児を個別に調査するには関係機関との調整、実施者、補助者のスケジュールの調整が必要であるのみならず、幼児の実験に乗らせるむずかしさもあり、データ収集をスムーズに行うには様々な課題が存在するが、スケジュール通りかつ良いデータが収集できた点は高く評価できる。 またデータを収集しながら下分析をある程度進めることができ、さらに、仮分析の過程で新しい分析方法の提案をすることができたことも、期間延長に繋がったものの、評価できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
バイリンガルならびにモノリンガルの幼児のデータが全て収集できたことから、今後は、新規に採用した分析を含めた統一した基準での下分析の完成をまず行い、総合的な分析を行う予定である。 バイリンガルとモノリンガルで統一された課題を実施し、比較可能な調査デザインを採用していたが、仮分析の過程で、両群を言語を基準に分けるだけで良いのかという問題がやはり浮上している。実行機能系に影響を与える他の要因についても考慮し分析を行う必要がある。 また多数の行動課題を用いているが課題間の関連性についても考える必要がある。言語切り替えの課題として採用した課題は、そのように機能していない可能性がある。 また、脳データをどのようにみていくかにも工夫が必要であると考える。関連する研究を検討し分析方法ならびに解釈について理解をさらに深める予定である。
さまざまな切り口での分析が必要であり、時間を要する可能性があるが、最終年度中に学会および論文発表が行えるよう準備をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで収集したデータの下分析において、より詳細に分析したほうがよい部分があることが判明した。これまで数年間のデータの該当部分の再分析ならび脳データの解析に時間を要することから、研究期間を延長することを決定した。本来4年で終了する予定であった研究計画を変更し、5年次まで延長することとしたことから、あえて次年度に使用できる予算を残すようにした。
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