研究実績の概要 |
子どものバイリンガルは常に二言語の情報を巧みに制御し場面に応じた使い分け行う経験をして生きていることから認知的柔軟性や葛藤抑制のような実行機能の能力が促進されていると考えられている。同様に二言語使用によって促進された認知機能は幼児期初期の他者理解の物差しである他者理解(心の理論)の能力をも促進すると解釈されている。しかしながら, 実際にどのような二言語使用や状態がこれらの能力を促進するかについてのエビデンスは殆どない。 さらに日本語を含んだ幼児バイリンガルの認知的側面は実証的に検討されてきていない。本研究の目的は二言語使用経験及び状態をより厳密に定義・計測したうえで実行機能系及び心の理論そしてそれに関わる脳神経基盤への影響を明らかにすることであった。 要因を絞り込むため、本研究では日本語と英語の二言語を獲得するバイリンガル幼児と、日本語のみを獲得するモノリンガル幼児を対象に調査・実験を行った。国内の幼稚園と海外の幼稚園に所属する3歳~5歳の子どもを対象に横断的に調査を実施した。個別での実験実施、ならびに複数の課題を実施することから、データ収集には時間がかかったが、1年目~4年目にかけて計画していたデータの収集がほぼ完了した。 最終年度である2019年度は、主にこれまで収集してきたデータの下分析に多くの時間を割いた。特に脳データは緻密であり多くの時間を費やした。また行動データについても下分析の続きを行った。特に前年度に語彙切り替え課題のデータの扱いに変更を加えたため、それに合わせて下分析を全てやり直すこととなったが、これまでの4年間のデータの下分析が完了した。 これまでの途中経過のデータを分析して国際ジャーナルへ投稿する準備も同時に進め、文献調査ならびに執筆を行った。
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