研究課題/領域番号 |
15K01785
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研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
辻川 ひとみ 帝塚山大学, 現代生活学部, 准教授 (70388883)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 家庭的保育 / 地域型保育 / 保育施設 / 戸外活動 / 地域資源 |
研究実績の概要 |
本研究は、家庭的保育施設の立地に関わる都市環境のあり方を示す事を目的とした一連の研究の一部である。既研究において、施設が実施している戸外活動の活動状況と施設周辺の地域資源利用の概況を全国132件の施設に対するアンケート調査により示し、対象施設が立地する周辺環境の地域が、6つの地域特性タイプに分類できる事等が分かっている。又、周辺地域が保有している地域資源は、①「体力作りや自然に触れる」事のできる(以下「体」)資源、②「人と触れあう、又は集団体験ができる」(以下「人」)資源、③「教養・文化・社会の事象を学ぶ」事の出来る(以下「教」)資源の3タイプの保育資源に分けられる事も明らかにしている。平成28年度の調査では、市民センター等の「人」資源を利用した戸外活動と、図書館等の「教」資源を利用した戸外活動の実態を把握し、市民センター等の「人」資源の利用には、自治体を初めとした地域全体の協力だけでなく、家庭的保育施設が独自で活動の場を広げる努力をする必要がある事や、「人」資源を利用する事で家庭的保育施設が地域に周知され、地域における保育拠点となりうる事が確認された。また、図書館を初めとした「教」資源の利用は、これまでの調査結果から、保育施設側が他の利用者への迷惑になると考え利用を控えたり、一度利用しても図書館側から断られたりしたケースもあり、利用し難い施設とされてきたが、本調査対象施設では、図書館を児童に多くの本に出会える機会を与える場所として活用しているだけでなく、児童にマナーを躾る場としても利用されており、図書館利用の可能性が示めされた。一方で、図書館側は、昨今の読書離れにより利用者が減少する中で、図書館を賑やかで活気のある場に変えようとする動きのある事が、図書館長へのヒアリング調査から明らかになり、家庭的保育施設の図書館の利用は、図書館側にとっても利益に繋がる可能性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度には、「人」資源及び「教」資源を利用した戸外活動ルートのうち、約半数の4ルートについて、それを実施する保育施設の施設長に対するヒアリング調査と追跡観察調査を実施し、それらの調査データを整理する事ができた。結果、家庭的保育施設の性質上、集団保育の欠如や遊具及び絵本などの設備が十分に整っていない事などによる保育の質の低下が懸念されている中で、本調査対象施設では、地域資源を地域の協力を得ながら有効に活用した戸外活動を行う事によって、家庭的保育施設の抱えるデメリットを補い、保育の質を向上させている事が確認された。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の平成29年度では、これまでに実施した実態調査から得られた結果と、施設を取り巻く物理的環境との関係について分析を行い、その結果から地域資源を利用した戸外活動の在り方や施設を取り巻く都市環境、施設の立地条件までを含めた提案を行う。また、実施済み調査の分析過程で、追加調査の必要性を検討し、必要性が認められた場合は、速やかに調査を行う予定である。さらに、夏頃には関連学会において研究成果の一部を発表するとともに、秋頃にはこれまでの研究成果をまとめ、査読付き論文集に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に現地調査を実施予定であった施設が、当該年度に施設の都合で閉園した事により、調査が中止となってしまったため、旅費として計上していた分の金額が未使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に実施予定であった調査を補うために、新たに調査対象施設を追加し、調査を行う必要があるかどうかを分析の過程で検討し、必要性が生じた場合には、速やかに実施する予定である。また金額が少額であるため、次年度の予算に組み入れ、調査・研究費用として効果的に使用する。
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