研究課題/領域番号 |
15K01786
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
江原 朗 広島国際大学, 医療経営学部, 教授 (30507215)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 救急搬送 / 小児 / 収容所要時間 / 病院小児科 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,総務省消防庁から平成19年から24年の救急搬送人員データベースの提供を受け,小児(消防庁の年齢区分では,新生児,乳幼児,少年)の時間帯別の収容所要時間(消防本部への通報から医療機関収容までの時間)および消防本部の管轄地域外への搬送比率を解析しました. この結果,平成20年から24年にかけて病院小児科が1割弱減少しましたが,小児の管外搬送率が高くはなっていませんでした.しかし,各年を通じて乳幼児と少年の管外搬送率は日中に低く,夜間に高い傾向が認められました. 重症度判定別に見ると,軽症や中等症の患者に比べ,重症患者では平均収容所用時間が長い傾向が見られました.乳幼児と少年では,軽症患者や中等症患者の平均収容所要時間の日内変動は小さいものの,重症患者ではばらつきが大きく,夜間に平均収容所要時間が延長する時間帯も多く存在しました.また,収容所要時間は,地方別では主に東北や関東で,また,人口規模別では5万人未満の地域で長い傾向が見られました.しかし,収容所要時間が平成20年から24年にかけて大きく変化することはありませんでした. さらに,平日日中,日曜日中および平日・日曜の夜間における18歳未満の救急搬送先について,全国750の消防本部にアンケート調査を行いました.この結果,平成22年と26年の最多搬送医療機関が一致していた消防本部の比率は,平日の日中79.2%,日曜の日中71.1%,平日・日曜の夜間83.3%でした.病院小児科が減少しても,最多搬送医療機関の変更はほとんどなかったと言えます.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では,初年度に救急搬送人員データベースのデータクリーニングを行う予定でした.しかし,データはクリーニングが行われた状態で総務省消防庁から提供を受けました.このため,若干のデータの確認だけで解析作業に入ることができました.2年目に実施する解析を初年度に前倒しして行うことができました. また,全国の消防本部へのアンケートも初年度のうちに発送ができました.まず,近隣の消防本部にアンケート用紙を持参し,回答が可能であるか否かのヒアリングを平成27年8月に行いました.北海道内の消防本部に予備アンケートを行いましたが,これは平成27年9月から10月にかけて実施しました.最終的に全国の消防本部へのアンケート用紙の発送は平成27年11月,督促は12月,回答の締め切りは平成28年1月末とすることができました.現在は,その回答を解析しております. したがいまして,申請時の予定よりも進行しているといえます.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析から,病院小児科が減少しても,救急搬送にかかる時間に大きな変化を生じていないことが明らかになりました.しかし,救急搬送は時間だけではなく,距離の面でも解析が必要となります. そこで,今後は距離に関する解析を主体に行っていこうと思います.まず,およその搬送距離と,小児の居住地から病院小児科までのおよその距離を解析していきたいと思っています.全国の消防本部へのアンケート調査の結果から,全国の9割弱の消防本部における18歳未満の最多搬送医療機関名が判明しています.そこで,各消防本部と最多搬送医療機関までのおよその距離を消防本部と医療機関の緯度・経度から計算し,人口密集地と過疎地との差,地方間の差を解析したいと思っています. また,各市区町村で人口の中心となる緯度・経度(人口重心)が公表されています.そこで,人口重心と直近の医療機関の緯度・経度の差および医療機関からの距離圏に小児人口の何割が居住しているかを解析していきたいと思います. こうした調査から,時間だけではなく,距離の面でも小児の医療機関へのアクセスの現状を明らかにしていきたいと思います.
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