小児科を標榜する病院数が年々減少しているが、病院小児科の減少に伴う小児患者の受診アクセスの変化に関しては十分に検討がなされていない。そこで、平成19年以降の全国の救急搬送人員データベース(総務省消防庁)をもとに、小児救急患者の収容所要時間(通報から医療機関収容までの時間)および地域外搬送比率を重症度別・時間帯別に解析し、その年次推移を明らかした。さらに、各消防本部へのアンケート調査により、日中と夜間の主な搬送医療機関を明らかにした。また、小児の居住地から各地域の主たる医療機関までの最短距離を地理情報システムを用いて計測した。 収容所要時間は、新生児、乳幼児、少年(男女合わせて少年と記載)ともに中央値は40分弱で時間帯による収容所要時間の差は小さかった。しかし、重症度により搬送時間に大きな差を認め、その95パーセンタイル値は重症>中等症>軽症の順となった。平成20年から24年の重症度別・時間帯別の収容所要時間の推移を解析すると、若干延長傾向にあったが、重症度別の傾向に大きな変化を認めなかった。 全国の750消防本部に時間帯別の小児の主たる搬送医療機関についてアンケート調査を実施した結果、平成22年と26年で最も搬送数が多い病院が一致していた消防本部が平日日中、日曜日中、平日・日曜の夜間ともに約7から8割を占め、病院小児科の減少により搬送先が変化する少ないものと思われた。しかし、これらの施設へ搬送される比率は増加していた。 さらに、小児の居住地から病院小児科までの最短距離を地理情報システムにより計測した。この結果、全国の小児の95%は、居住地から20km圏内に小児科医が1名存在する病院があり、50㎞圏内には5名以上の小児科医が存在する病院が明らかになった。 これらの知見から、病院小児科の数は年々減少しているものの、救急搬送に関する時間の極端な延長は生じていないものと思われた。
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