研究課題/領域番号 |
15K01788
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研究機関 | 静岡県立大学短期大学部 |
研究代表者 |
松平 千佳 静岡県立大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (70310901)
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研究分担者 |
加藤 恵美 静岡県立大学短期大学部, その他部局等, 助教 (50381314)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 社会福祉関係 / 医療・福祉 / ホスピタル・プレイ / 遊育 / ハイリスクな子どもたち |
研究実績の概要 |
本研究は、病児や被虐待児、被災児や遺児などハイリスクな子どもたちを支援する国内外の先進事例を統合すること、遊びを用いた支援の仕組みを提示し、遊びがすべての子どもを育む「遊育理論」を確立するための研究を進めること、そして結果として、日本社会における遊びの価値をとらえ直すための研究を行うとこを柱として計画されたものである。 まず、第1の先進事例の統合にかんしては、2016年1月に、オーストラリアで開発された、自閉症スペクトラムの子どもたちの生きるスキルを高める援助プログラム、Learn to Playを約80名のHPS及び関連領域の受講生に対し教えたことを成果として挙げる。遊育支援の確立に関しては、人工呼吸器などを装着した医療的ケア児に対し、HPSが在宅の支援活動を行う中で、遊びが子どもたちの健やかな育ちを支えることが、家族にも明らかになってきたという実感を持っている。3つ目の価値の問い直しについても、PTやOT、また特別支援学校の教員とのコラボレーションを通して、遊びの持つ力に対する理解が深まっており、領域を横断した成果が生まれてきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
病児を遊びを用いて支援すること、またその専門家としてのホスピタル・プレイ・スペシャリストの役割と日本における位置づけ、支援を受ける子ども及び家族からの評価など多面的に研究が広がっていると考える。また、研究を通してハイリスクな子どもたちに、遊びという子どもとしての姿を最も顕著に表すことが可能な活動が、許されていないという深刻な現状も明らかとなっている。医療が作り出すトラウマに対する理解と、それを最低限防ぐ方法など、医療関係者に教育することの重要性が明らかとなっている。また、医療的ケア児が遊びを通して自己表現が可能になると、家族との関係性が好転することも明らかとなっている。もちろん、その背景には医療的ケア児と家族が地域の中で孤立している問題があり、改めて医療が生かすことと、子どもとして生きることをつなげていくことの重要性を認識している。 諸外国の先進事例に関しては、感覚障害児に対するコミュニケーション方法を開発実践している専門家との協働により、医療的ケア児、家族、ケアワーカー、およびリハビリの関係者などに方法論を伝えることができた。新しい支援方法を取り込んだ結果、どのような変化が生まれるのか、研究を進めていきたいと考える。 国内調査では遺児を対象としたグリーフケアプログラム実践団体2団体への面接調査を実施し、主に実践方針とその内容、課題について聞き取りを行った。いずれの団体も定期開催プログラムへ継続参加する親子が増えつつあり、子どもとともに、保護者への支援の必要性が明らかとなった。今後の課題として、思春期の子どもへのケアプログラムの内容と広報の検討であることが共通点であった。年齢にふさわしい環境と「話す」ことを中心としたプログラムとともに、「プレイ(遊び)」も取り入れることがグリーフケアとトラウマの予防に重要と考える。
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今後の研究の推進方策 |
ハイリスクの子どもに対する遊びを用いた支援、及び諸外国の先進事例を取り込む研究を通して、新たな課題が次から次へと発見され研究を発展させる必要を痛感している。しかし、平成30度は最終年度ということもあり、研究成果を発表し、評価を受けることに重きをおいていきたい。ニュージーランドで開催されるホスピタル・プレイ・スペシャリスト研究大会、IPA(International Play Association)日本総会、日本重症心身障害学会、OMEP(ORGANISATION MONDIALE POUR L'EDUCATION PRESCOLAIRE)世界総会・大会など、国内外の子ども支援に関わる研究者が集う研究大会に出向き、積極的に研究発表を行う計画である。 研究発表を通して、日本におけるハイリスクの子どもたちに対する支援の現状と課題を明らかにし、日本のホスピタル・プレイ・スペシャリストの取り組みを紹介していく。また、諸外国の研究者と協働することによって、新たな支援方法を学び次の研究へとつなげていきたい。OMEP世界大会では、HPSの生みの親であるスーザンハービー氏が、OMEPロンドンの主要メンバーであったことを紹介することによって、OMEP日本との協働を創造していきたいと考えている。 ハイリスクな子どもたちに対する支援方法は、非常に学際的な色彩の強い研究テーマであるため、「遊び」をメディアに研究者間で共通言語を見いだし、学問領域を超えた対話と臨床を作り出していきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)他の研究費から支払う余裕があったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 1.海外の小児専門病院を訪問し、子ども及び家族支援のあり方、その流れと方法を調査研究する。 2.ハイリスクな子どもたちを支援する国内外の先進事例の研究を進める。
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