研究課題
梯子状ポリエーテル化合物イエッソトキシンのAB環部分と共通構造を有するイエッソトキシンAB環エポキシ化合物を酵素反応のモデル基質として合成した。渦鞭毛藻酵素抽出液に、エポキシモデル基質を加えて、室温でインキュベーションを行った。酵素混合液に、メタノールを加えて反応を停止し、遠心分離により不溶化したタンパク質群を除去し、メタノールにより酵素反応物を抽出した。酵素反応物を液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリー分析を行ったところ、エポキシド基質が消失し、6員環エーテルが主生成物として変換されたことを確認した。本反応が、エポキシドの開環反応により、直接的に6員環エーテルを生成している事を確認するために、5員環エーテル化合物を酵素抽出液中で24時間インキュベーションした。その結果、6員環エーテル化合物の生成は確認されず、本酵素が、エポキシドの6-エンド開環反応を触媒していることを確認した。渦鞭毛藻が生産する梯子状ポリエーテル化合物の生合成では、エポキシド中間体が酵素反応により、化学的に不利なエンド環化物を生成することを明らかとした。渦鞭毛藻はゲノムサイズが大きいため、分子生物学的手法による生合成研究が困難であったが、有機合成化学による基質合成と質量分析を利用した微量分析法、渦鞭毛藻から抽出した酵素を用いた生化学的手法を組み合わせることにより、梯子状ポリエーテル化合物の生合成に関与すると考えられる生合成関連酵素を初めて見出すことが出来た。これまでの研究では、鎖状エポキシド化合物が不安定であったため、長時間の酵素反応を行うことが出来なかったが、イエッソトキシンAB環エポキシ化合物では、環状エーテルをテンプレイトとして導入することにより、エポキシドの自発的開環反応を抑制し、エポキシド開環酵素を発見することに成功した。
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