研究課題/領域番号 |
15K01799
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
坂本 敏夫 金沢大学, 自然システム学系, 准教授 (70324069)
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研究分担者 |
松郷 誠一 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (30148126)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多型 / シンテニー / 配糖体 / 環境適応 |
研究実績の概要 |
陸棲シアノバクテリアNostoc commune(イシクラゲ)は,休眠胞子などを形成することなく非常に強い乾燥耐性を獲得して陸上環境に適応しており,コスモポリタンに分布している。イシクラゲには遺伝的多型があり4種類に大別される。これらの遺伝子型を形態的に区別することは困難である。イシクラゲは紫外線に対する防御機構の一つとしてマイコスポリン様アミノ酸(MAA)をもつ。MAAは310から340 nmの領域に吸収極大を示す紫外線吸収色素である。イシクラゲはMAAの違いによって4種類の化学型に分けられる。遺伝子型が分かっている43試料についてMAAを抽出して分析したところ,遺伝子型ごとにそれぞれ決まったMAAが検出され,遺伝子型と化学型が一致した。金沢大学角間キャンパスの47地点からイシクラゲを採集し,MAAを抽出して分析したところ,これまでに発見されている4化学型に分類され,新規のMAA型は見つからなかった。それぞれの遺伝子型について培養株を分離し,国立環境研究所NIESコレクションに寄託した。実験室で培養したイシクラゲの培養株は,それぞれの遺伝子型に特有のMAAを産生した。以上の結果は,イシクラゲは4種類に分けられ,遺伝子解析もしくはMAA分析によって判別できることを示す。 イシクラゲ(遺伝子型A)とNostoc verrucosum(アシツキ)からMAA生合成を司るmys遺伝子群を単離し比較解析を行った。どちらもD-Ala-D-AlaリガーゼをコードするmysD遺伝子をもち,Nostoc型の生合成経路によりポルフィラ-334およびシノリンを産生する。イシクラゲではmysABCD遺伝子がクラスターを形成しているのに対して,アシツキではmysABC遺伝子とmysD遺伝子がゲノム上で離れた位置に存在するという違いが見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イシクラゲの多型をMAA化学型の違いとして記載することができ,それぞれの遺伝子型について培養株を国立環境研究所NIESコレクションに寄託することができた。また,イシクラゲ(遺伝子型A)とその祖先種と考えているアシツキとの間でmys遺伝子群を比較することができた。これまでのところ研究当初に予定したとおりの成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子型Cがもつ新規MAAについて精密質量分析により組成式を決定していたが,NMR解析による化学構造解析を行うために十分な試料が確保できなかった。不純物として含まれている多糖との分離が従来の精製手順では困難なことが分かり,現在,手順の見直しを行っている。 イシクラゲ(遺伝子型A)がもつ7-O-(β-arabinopyranosyl)-porphyra-334 (478 Da)を生合成するためにはmysABCD遺伝子に加えて配糖体化するための酵素をコードした遺伝子が必要である。mysABCD遺伝子の近傍を探索したが候補となる遺伝子は見つからなかった。標的遺伝子がゲノム上で離れた位置に存在する可能性があり,全ゲノム解析を視野にいれ,探索の範囲を拡大している。
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