研究課題
陸棲シアノバクテリアNostoc commune(イシクラゲ)は,休眠胞子などを形成することなく栄養細胞が強い乾燥耐性を獲得して陸上環境に適応している。イシクラゲの細胞は細胞外マトリクスに覆われており,細胞外マトリクスを人為的に取り除くと乾燥耐性が失われる。細胞外マトリクスには抗酸化作用に関わるタンパク質が見いだされる。紫外線に対する防御機構の一つとしてスキトネミンおよびマイコスポリン様アミノ酸(MAA)をもつ。これらの紫外線吸収色素は抗酸化活性を示す多機能性分子である。遺伝的多型があり,4種類の遺伝子型に分類できる。本研究では,以下のことを明らかとした。イシクラゲはMAAの違いによって4種類の化学型に分類され,化学型と遺伝子型が一致する。それぞれの遺伝子型について培養株を分離し,国立環境研究所NIESコレクションに寄託した。イシクラゲ(遺伝子型A)と近縁種Nostoc verrucosum(アシツキ)からMAA生合成を司るmys遺伝子群を単離し比較した。どちらもD-Ala-D-AlaリガーゼをコードするmysD遺伝子をもち,Nostoc型の生合成経路によりポルフィラ-334およびシノリンを産生する。イシクラゲではmysABCD遺伝子がクラスターを形成しているのに対して,アシツキではmysABC遺伝子とmysD遺伝子がゲノム上で離れた位置に存在するという違いが見られた。ポルフィラ-334を配糖体化する酵素遺伝子を特定するには至らなかった。遺伝子型Cから新規MAA誘導体を単離・精製した。精製した新規MAAの分子量は756 Da,精密質量分析から予測された組成式はC34H52N4O15であった。化学構造解析の結果,新規MAAがこれまでに化学型Bにおいて見いだした1050 Da MAA配糖体のアグリコンであることが分かった。この新規MAAの慣用名をnostoc-756と命名した。
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http://photon.w3.kanazawa-u.ac.jp/