研究実績の概要 |
今年度は、前年度までに同定されたChM-Iアンカー候補分子18種の中で、最も高い頻度で検出されたMatrillin-1 (Matn-1)について組換え体タンパク質を調製し、直接相互作用の有無について検討を行った。Matn-1はvon Wilebrand Factor Aタンパク質スーパーファミリーに属する分子で、3量体形成を介して線維性軟骨マトリックスの形成に関与することが知られている。Matn-3及びMatn-4も候補分子に含まれていたので、これらとともにFLAGタグをN末端側に付加した組換え体タンパク質を発現・タグ精製を試みた。しかしながら、Matn-1は培地中には全く検出されず分子会合により不溶化していると推察されたため、3量体形成に関わるC末端のα-helical coiled-coilドメインを欠失した変異体タンパク質(Matn1-CT)の発現を試みた。その結果、Matn1-CTは良好に培地中に発現し精製することができたため、天然型ウシChM-Iとの相互作用を免疫沈降法により検証した。その結果、Matn1-CTはChM-I免疫沈降物中に僅かながら検出されたが、Matn-3, 4は全く検出されなかった。前年度相互作用が認められた候補分子Del-1と比較すると、Matn-1はChM-Iと極めて弱く相互作用するか、または直接相互作用はほとんどないと推察される。軟骨抽出液中に同定されたChM-I免疫沈降物にはMatn-1, 3, 4の他、これらと相互作用することが知られているCOMP, biglycan, decorin, aggrecan, typeII collagenなどが同定されたため、ChM-Iはこれらによって形成される線維性軟骨マトリックス複合体にアンカリングされていると考えられた。
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