研究課題/領域番号 |
15K01803
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
照屋 俊明 琉球大学, 教育学部, 准教授 (90375428)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 骨芽細胞 / 海洋シアノバクテリア / アルカリ性ホスファターゼ |
研究実績の概要 |
これまでに沖縄県浦添市付近の海岸で採集した未同定海洋シアノバクテリアから、破骨細胞の分化を阻害する化合物を単離しているが、得られた化合物が微量であり詳細な化学構造式が未決定であった。予備調査の結果から、この化合物を含む未同定海洋シアノバクテリアは沖縄県恩納村付近の海岸で4月~12月頃発生することが明らかとなっている。そこで2015年6月~8月にかけて沖縄県恩納村付近の海岸で採集した未同定海洋シアノバクテリアから破骨細胞の分化を阻害する化合物を探索したところ、新規化合物okeaniamideを単離し、各種スペクトル解析、分解、誘導反応により化学構造式を明らかにした。またokeaniamideの新規類縁体であるchlorookeaniamideも同時に単離したが、chlorookeaniamideは破骨細胞の分化阻害活性を示さないことが明らかとなった。 骨芽細胞に作用する低分子化合物については、約160種類の海洋生物の抽出物から骨芽細胞の分化を促進する低分子化合物を探索した。その結果、沖縄県浦添市付近の海岸で採集した未同定海洋シアノバクテリアから、骨芽細胞の初期分化マーカー酵素であるアルカリ性ホスファターゼ(ALP)活性を上昇させる化合物を単離した。 さらに沖縄県糸満市付近の海岸で採集した海洋シアノバクテリアOkeania sp.から新規環状デプシペプチドodoamideとodobromoamideを単離した。得られた化合物については骨芽細胞、破骨細胞に対する作用は確認していないが、腫瘍細胞に対して強い増殖阻害を示す事が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨代謝を調節する低分子化合物の探索において、破骨細胞を標的とした化合物の探索では、予定通り沖縄県恩納村付近の海岸で海洋シアノバクテリアを採集することが出来た。また、採集した海洋シアノバクテリアから破骨細胞の機能を阻害する化合物を単離し、その化学構造を明らかにした。骨芽細胞を標的とした化合物の探索においては、沖縄県浦添市付近の海岸で採集した海洋シアノバクテリアからALP活性を上昇させる化合物を単離している。得られた化合物が微量であり、詳細な化学構造は未決定であるが、精密質量測定及び各種スペクトル解析の結果から新規化合物と推定している。 さらに骨代謝を調整する低分子化合物の探索過程において、海洋シアノバクテリアOkeania sp.から2種類の新規環状デプシペプチドを得ている。
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今後の研究の推進方策 |
Okeaniamideについては構造解析が終了したので、RANKL刺激により引き起こされるIKK/IkB/NF-kB経路やMAPKs (p38MAPK, JNK, ERK)経路の活性化とマスター転写因子として重要視されるNFATc1とその上流にあるとされるc-Fosの発現量に対する効果を検討する。またALP活性を上昇させる化合物については、構造解析のために必要な海洋シアノバクテリアを確保する。次に採集した海洋シアノバクテリアから化合物を単離・精製し、各種スペクトル解析により化学構造式を明らかにする。得られた化合物については、骨芽細胞の初期分化だけでなく後期分化にも影響するか確認するため、成熟骨芽細胞の分化マーカーであるオステオカルシンを測定し、骨芽細胞による石灰化を評価する予定である。odoamideとodobromoamideについては骨芽細胞、破骨細胞に対する作用を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
設備備品として購入予定であったゲル撮影装置を購入し、得られた化合物の薬理活性や作用機序について検討したが、余剰分が生じたため次年度への繰り越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度の余剰分は物品費、旅費に使用する予定である。翌年度分として請求した助成金は予定通り、物品費、旅費、その他の経費に使用する予定である。
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