研究課題/領域番号 |
15K01804
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
照屋 健太 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (30372288)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 異常型プリオン蛋白質 / クロスリンク / 多量体 |
研究実績の概要 |
申請者は夾雑系において異常型プリオン蛋白質特異的に異常型プリオン蛋白質どうしのクロスリンクを引き起こすある色素化合物Aを見出してきた。昨年度はこの反応についてプリオン持続感染細胞の溶解液を用いて各種条件検討を行った。本年度は、この反応を利用して、異常型プリオン蛋白質構造的特徴の調査と、クロスリンク部位同定のための予備的な試験を行った。 1. 異常型プリオン蛋白質の構造の詳細は不明であるものの、異常型プリオン蛋白質と正常型プリオン蛋白質の接触は分子レベルでの感染伝播に必須である。上記で見出した反応は前年度の調査により異常型プリオン蛋白質間で想定される接触面の近傍にあり、そのため、クロスリンク部位の同定は異常化に関する情報を含んでいると考えられる。クロスリンク反応後の同一サンプルに対して、抗体パネルを用いて単量体と二量体の比をとったところ、異常型プリオン蛋白質のN末端部位を認識する抗体では、二量体のシグナルが減弱していた。このことはクロスリンクによってエピトープ部の認識が弱くなったためであると考えている。 2. クロスリンク構造同定のために、プリオン持続感染細胞を用いた試験を計画していたが、解析に必要な精製品の調製が困難であることが判明し、プリオン感染マウス脳からの精製に切り替えることとした。二量体反応条件の再検討を行い、脳サンプルにおいてもクロスリンクが可能であることが判明した。また、異常型プリオン蛋白質の精製も可能であった。十分なプリオンの不活化ののち、ペプチドマスフィンガープリントでの調査を行っている。併せて、大腸菌リコンビナント調製蛋白を用いて参照用データリストを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異常型プリオン蛋白質の供給源を感染細胞から脳サンプルへと変更を行った。プリオンの不活化及び精製手順が厳重・複雑化し、脳サンプルに対する最適化が必要であったものの、ゲル状で切り出し可能なバンドを得るに至り、本年度の計画を履行できたと考えている。次年度の計画に向けて、安定した異常型プリオン蛋白質のクロスリンク体を調製するための反応条件は整ったと考えている。参照用データリストを利用した異常型プリオン蛋白質のペプチドマスフィンガープリントでは単量体について、いくつかのフラグメントが確認できている。現在、得られているフラグメントでは単量体と二量体の違いを描出するに至っていない。現在、蛋白のフラグメント化にはトリプシンを利用している。さらに各種の限定的な消化酵素を利用したフラグメント調製によって単量体と二量体のフラグメントの違いを検出したいと考えている。その後、内部配列の解析と、これまでの反応挙動を考慮することにより、クロスリンク部位の解明を行う
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度への計画通り、このクロスリンク体の化学構造の同定に向けて研究を行う。この計画のためには十分量のクロスリンク体の精製品が必要であることが判明し、培養細胞から脳にサンプル供給源を変更することで対応した。以上のようにサンプル調製についての検討を終了とし、解析段階に入っている。現在、ペプチドマスフィンガープリントはMALDIによる質量分析にて実施しているが必要であれば、LCによる分画を組み合わせ、化学構造を決定したいと考えている。さらに、その化学構造を新規エピトープとした抗体の作成に取り組みたいと考えている。
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備考 |
照屋健太、堂浦克美 「プリオン病のアミロイドーシス」最新アミロイドーシスのすべて 監修: 安東由喜雄、医歯薬出版 2017年3月15日発行、226-236
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