研究課題/領域番号 |
15K01807
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
齊藤 玉緒 上智大学, 理工学部, 教授 (30281843)
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研究分担者 |
森田 直樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域 生物プロセス研究部門, 上級主任研究員 (60371085)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生合成 / ポリケタイド |
研究実績の概要 |
本研究は、細胞性粘菌においてのみ見られているハイブリッド型ポリケタイド合成酵素(PKS)であるSteely酵素をモデルとして、どのようにして一つのPKS が発生段階に応じて複数の産物を与えているのか、その生合成経路と駆動システムを解明することを目的としている。 具体的な内容: I型とIII型のPKSが融合したSteelyB酵素が発生中期ではDIF-1を合成し、後期では酵素が二つに分離して、III型酵素が単独で働き、他の修飾酵素と協調してDIF-1以外の新たな化合物(LCCと呼ぶ)を作るという仮説(プロダクトスイッチ仮説)を検証するため、以下の3点を中心に研究を進めた。1)マイナーLCCの精製と同定 2)生合成経路駆動システムとしてのSteelyB酵素構造変換の検証 3)切断後のSteelyB 酵素と同等と考えられるIII型PKS遺伝子を導入したstlB欠損株に、予想した前駆物質を与えることによってLCCの合成が回復するかの検証。 意義・重要性:本研究では生合成経路の個々の段階の理解とともに、多段階酵素反応をマシナリーとして捉えた生合成制御に関する仮説を導き出したいと考えている。現在取り組んでいるのはマシナリーの稼動システム・制御機構についてで、生合成経路のスタートの部分がどのようにして制御されているのかに焦点を当てている。この点については昨年の結果と合わせて、当初の仮説を実験的データで確認することができつつあり一定の成果を得ることができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メチル化酵素の候補として考えていたomt2については遺伝子破壊株を作成し、LCCの合成が阻害されるかどうかを検証したが、特に影響はなかったことからメチル化は別な酵素が行っていると考えられる。 昨年度、構造を決定したLCC-1以外のマイナーな複数のLCCの 構造を決定し、生合成経路の予測の補強を試みた。現在2つのマイナーなLCC化合物を精製しMS分析を行ったが、量的にNMRによる解析を行うことが困難であると判断された。 SteelyB酵素がDIF-1の存在下でIII型PKSを切り離すという構造変化について、切断部位を特定することができた。当初の予測通りアシルキャリアープロテイン部分とIII型PKS部分の間で酵素が切り離されていることがわかった。 しかし、予備的な実験ではIII型PKSのみを発現させたstlB遺伝子欠損株にLCC-1の前駆物質と考えられる化合物を与えてもLCC-1の合成が回復されておらず、この点については引き続き検証する必要があると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は生合成マシナリーの稼動システムの仮説を導き出すため、引き続きIII型PKS遺伝子を導入したstlB欠損株に予想した前駆物質を与えることによってLCC-1の合成が回復するかの検証を中心に研究を進める。 また、マシナリー全体の制御がSteelyB 酵素の産物であるDIF-1 によって行われていることを検証するため、DIF-1の存在によってSteelyBのC末端側のIII型PKSが切断される機構を解明し、マシナリーの駆動制御についての仮説を導き出したい。
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