研究課題/領域番号 |
15K01808
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
紙透 伸治 麻布大学, 獣医学部, 講師 (30553846)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 標的タンパク質 / 神経細胞死 / 活性窒素 / ケミカルバイオロジー / 生理活性物質 |
研究実績の概要 |
ネオエキヌリンAは神経細胞のパーオキシナイトライト(ONOO-)による細胞死を抑制する。本研究では、ネオエキヌリンAがもつこの神経保護作用のメカニズムを解明することを目的とした。前年度はファージディスプレイ法を基盤とする手法により、ネオエキヌリンAが直接作用する標的タンパク質として、Secretogranin-1とGlutaredoxin-3を得た。本年度は、水晶発振子マイクロバランス(QCM)法を用いて、これらのタンパク質とネオエキヌリンAの相互作用を解析した。ビオチン化ネオエキヌリンAをセンサーチップに固定し、Glutaredoxin-3を添加したところ振動数の減少が見られた。このことからネオエキヌリンAはGlutaredoxin-3と結合することが示唆された。Secretogranin-1もQCM法により相互作用解析を行ったところ、このタンパク質もネオエキヌリンAと結合することが示唆された。ネオエキヌリンA のGlutaredoxin-3とSecretogranin-1に対する解離定数はそれぞれ12 nM、31 nMと見積もられた。 次にsiRNAを用いて、PC12細胞のSecretogranin-1とGlutaredoxin-3をノックダウンし、ONOO-に対する感受性を調べた。PC12細胞をsiRNAで処理し、神経成長因子によって神経細胞へと分化させた。分化後、ONOO-を発生させる3-morpholinosydnonimine (SIN-1)を処理することで細胞死を誘導し、感受性の変化を調べた。その結果、Secretogranin-1のノックダウンによりSIN-1に対する感受性が下がり、Glutaredoxin-3のノックダウンではSIN-1に対して感受性が上がることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ファージディスプレイ法によって得られた標的タンパク質の候補であるSecretogranin-1とGlutaredoxin-3が、実際ネオエキヌリンAと相互作用することが確認できている。また、ノックダウンによる解析により、これらの候補タンパク質はONOO-によって誘導される細胞死との関連性が示唆されているため。
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今後の研究の推進方策 |
Secretogranin-1とGlutaredoxin-3二つのタンパク質に絞って、さらにネオエキヌリンAの神経保護効果との関連性を細胞生物学的手法により調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
タンパク質と化合物の相互作用解析が想定した以上に順調に進んだため、その分の予算を次年度の細胞生物学的解析に用いることにした。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞生物学的解析に必要な抗体やタンパク質、活性測定試薬、siRNAなどに使用する。
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