研究実績の概要 |
本研究の目的は、生体内の先天性胆汁酸代謝異常 (IEBAM) による先天性奇形疾患であるニーマン-ピック病C1(Niemann-Pick Disease type C1; NPDC)と3β-ヒドロキシ-Δ5-ステロイドデヒドロゲナーゼ/イソメラーゼ(3β-HSD)欠損症を対象とし、これら疾患の特異的指標(疾患マーカー分子)として期待される異常胆汁酸の代謝産物標品の化学合成を行うと共に、液体クロマトグラフィー-タンダム質量分析(LC-MS/MS)法を用いるメタボローム解析を行い、両疾患の個別確定診断法の開発に寄与することにある。なお、NPDC疾患は肝において、7-デヒドロコレステロール前駆体からコレステロールへの変換を司る酵素欠損症であることから、7-デヒドロコレステロール レダクターゼ欠損症(Dhcr7)とも称されている。 平成27年度においては先ず入手可能な胆汁酸原料ケノデオキシコール(CDCA)を用いて、遊離型異常胆汁酸である3β,7β-ジヒドロキシ-5-コレン酸(3β,7β-DH-Δ5-CA)の化学合成を行った。他に3α,7α-ジヒドロキシ-5-コレン酸及び3α,7α,12α-トリヒドロキシ-5-コレン酸、3-オキソ-5-コレン酸とそれらの多重抱合体の合成も検討した。これら標品合成には申請者らが先に開発した水酸基の反転反応、Ru, Osによる金属ポルフィリン錯体類による遠隔含酸官能基化等の反応を有効活用することにより達成した。 次に3β,7β-DH-Δ5-CAにおいて硫酸及びアミノ酸抱合型異常胆汁酸の化学合成を行った。通常、生体内胆汁酸は遊離型のみでなく、むしろそれらの殆どはアミノ酸(グリシン、タウリン)あるいは硫酸と種々の抱合体を形成して水溶性となり、体液中(尿、血清)に排泄される。そこで、上記の合成で得た非抱合体標品を種々の対応抱合体へと導いた。
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