研究課題/領域番号 |
15K01810
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
大西 素子 中部大学, 応用生物学部, 教授 (00312653)
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研究分担者 |
禹 済泰 中部大学, 応用生物学部, 教授 (20272693)
饒村 修 中部大学, 工学部, 准教授 (20365175)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プロテインホスファターゼ / 阻害剤 / 破骨細胞 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
私達はin vitro PPM1活性測定システムを用いてPPM1の活性調節物質を広く探索した結果、これまでにPPM1AおよびPPM1Bを活性化する低分子化合物としてグラブリジンとピシフェルジオールを同定し、その破骨細胞分化阻害効果を明らかにしている。さらにこれらの化合物はRANKLによって活性化されるストレス活性化キナーゼ(SAPK)シグナル伝達経路およびNF-κB経路をともに負に制御することにより、破骨細胞分化を抑制することを示してきた。 今回私達は、これらの化合物の作用点を明らかにするため、二つのシグナル伝達経路の上流に位置する共通のシグナル因子であるTAK1に対する効果を検証し、RANKLによって亢進するTANK1のリン酸化レベルがこれらのPPM1活性化物質によって阻害されることを明らかにした。またsiRNAを導入してPPM1Bの発現を抑制したRAW264細胞では、PPM1活性化物質による破骨細胞分化阻害効果が抑制されることを見出し、PPM1Bがこれらの物質の標的であることを示す結果を得た。以上の結果はこれらのPPM1活性化物質がPPM1Bを活性化することによって、PPM1BによるTAK1の脱リン酸化が促進されてTAK1が不活性化され、下流のシグナル伝達経路が抑制されることを示唆している。さらにこれらのPPM1活性化物質とPPM1Aとの相互作用についてドッキングシミュレーションソフトを用いた解析を行った結果、結合部位を予測する初期データを得ることができた。一方、PPM1Dの阻害物質であるジフェニルジセレニドの類似物質についてPPM1D阻害活性を検討し、構造活性相関に関する様々な知見を得るとともに、新たな阻害化合物を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
再現性を得るために繰り返し実験を行ったため、PPM1活性化物質を予想よりもはるかに多く消費してしまった。市販されていないピシフェルジオールの供与が限られていたため、脂肪細胞に対する効果を十分検証することができなかった以外は、ほぼ計画どおりに研究を実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
脂肪細胞に対するPPM1活性化物質の効果を検証し、その作用機序を明らかにすべくインスリンシグナル伝達系を始め、脂肪細胞分化、脂肪滴形成および脂肪細胞の肥大化に関係するシグナル伝達系に対する影響を分子レベルで検討する。新たに見出されたPPM1D阻害物質については、酵素活性に対する反応速度論的解析を行い、性質を明らかにするとともに、乳がん細胞などに対する効果を検討する。また今年度に引き続きin silico解析によって、PPM1活性化物質とPPM1AおよびPPM1Bの結合シミュレーションを行い、結合部位を予測する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の値引きにより当初の予想所要額よりも実際の使用額が低く抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初使用する予定であった細胞培養用の血清が、トラブルにより使用できないことが判明したため、当該助成金を新たな血清の購入に充てる予定である。
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