研究課題
PPM1は金属イオン依存性のプロテインSer/Thr ホスファターゼに分類され、細胞の増殖、分化、細胞死を始め、様々な生命活動の制御に関与していることが報告されている。我々はこれまでにPPM1ホスファターゼの活性化および阻害の両面から低分子化合物の探索を行ってきた。今年度は活性化物質について以下の検討を行った。1)PPM1AおよびPPM1Bとその活性化物質の結合部位の解析昨年度に引き続き、PPM1AおよびPPM1Bの活性化物質としてこれまでに同定したイソフラボノイド系イソフラバンであるグラブリジンと、ジテルペンフェノールのピシフェルジオールの結合部位についてMolegro Virtual Dockerを用いたドッキングスタディを行った。計算にはPPM1AとPPM1Bの結晶構造としてProtein Data Bankに登録されている1A6Qと2P8Eを用いた。10000回の試行の結果、結合し易いアミノ酸は2つの化合物の間で共通しており、PPM1Aではどちらの化合物もArg124、Phe200、Asp123に最も結合し易いことが予測された。報告されている立体構造から、これらのアミノ酸はタンパク質表面の同一のポケットにすべて存在し、PPM1Aの活性中心とは離れた位置に存在することが明らかとなった。PPM1Bでは同様に両方の化合物ともArg33、His62、Glu37に結合し易いことが予測された。2)脂肪細胞における活性化物質の作用解析マウス線維芽細胞株3T3-L1を成熟脂肪細胞に分化させた後、化合物を加えてさらに4日間培養し、Oil Red O染色を行った。その後溶出したOil Red Oを定量することにより、脂肪滴の蓄積に対するグラブリジンとピシフェルジオールの効果を検討した。その結果、これらの化合物は成熟脂肪細胞における脂肪滴の蓄積を抑制することが明らかとなった。
3: やや遅れている
昨年度、予想以上にピシフェルジオールを消費してしまったため、成熟脂肪細胞の脂肪蓄積に対するPPM1活性化物質の抑制作用は明らかにできたものの、細胞の培養期間が長く、大量の化合物を必要とするため、限定的な検討にとどまらざるを得なかった。また合成によって得られた一連のジフェニルジセレニド類似化合物が少量であったため、PPM1D阻害物質の探索に用いることはできたが、それ以上の検討は進められなかった。
共同研究者の協力を仰ぎ、ピシフェルジオールを供与してもらい、グラブリジンとともにその脂肪蓄積抑制効果の作用機序について検討する。さらに新たに見出されたPPM1D阻害物質については、検討に必要な量の合成が終了した後、生理的な基質に対する阻害活性の確認と反応速度論的解析を行い、阻害様式を明らかにする。また野生型p53が発現するがん細胞株を用いて細胞増殖に対する化合物の効果を検討する。
試薬メーカーのキャンペーン等、多少の値引きがあったため。
次年度の物品費に組み込んで効率的に使用する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
Mol Nutr Food Res.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1002
FEBS Lett.
巻: 590 ページ: 3606-3615
https://www3.chubu.ac.jp/faculty/ohnishi_motoko/kenkyunaiyo