研究課題
哺乳類の金属イオン依存性プロテインSer/Thrホスファターゼ(PPM)の1つであるPPM1Bは、脂肪細胞の分化に必須の転写因子であるperoxisome-proliferator-activated receptor γ(PPARγ)を活性化することにより、脂肪細胞の分化に関与することが報告されている。これまでの検討からPPM1AおよびPPM1Bの活性化物質として我々が見出したピシフェルジオールとグラブリジンは、成熟脂肪細胞に分化誘導後の3T3-L1細胞における脂肪蓄積抑制効果を持つことがわかっているが、これらの化合物は脂肪細胞分化を促進せず、脂肪細胞への分化促進によって脂肪細胞の肥大化および脂肪蓄積を抑制するのでは無いことが明らかとなった。一方、AMP-activated protein kinase(AMPK)は生体内におけるエネルギーセンサーとして知られるプロテインキナーゼであり、脂質合成を抑制するが、PPM1AおよびPPM1BはAMPKを脱リン酸化することによって不活性化する。そこでインスリンによって活性化されるAMPKに対するこれらの化合物の影響を検討した結果、予想とは逆にピシフェルジオールとグラブリジンはともにAMPKのThr172のリン酸化レベルを上昇し、AMPKを活性化することが明らかとなった。そこでこのThr172の前後のアミノ酸配列をもとに合成したリン酸化ペプチドを基質として、まずPPM1Bに対するこれらの活性化物質の作用を検討したところ、これらの化合物がPPM1Bの活性を阻害することが示された。以上より、グラブリジンとピシフェルジオールは、PPM1AおよびPPM1Bと相互作用することにより、リン酸化AMPKに対してはこれらのプロテインホスファターゼの阻害物質として作用し、AMPKの活性化を亢進、脂質合成を負に制御するのではないかと考えられた。
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