研究実績の概要 |
当初平成29年度に終了する予定であったが、D-アミノアシラーゼの発現系についての論文投稿において大幅な追加実験を要求されたため、基質特異性に関する研究が平成30年度にずれ込んだ。 対象としたD-アミノアシラーゼは、Thermomicrobium roseum由来Tr_DAACである。Tr_DAACの金属イオン特異性を調べるため、組換え大腸菌内でTr_DAACが取り込んだ金属を変性剤存在下EDTAで除去し、そののちに種々の金属(Cu, Zn, Mn, Co)を含む緩衝液で透析することによりTr_DAACに金属を取り込んだ。その中で最も高活性を示した金属はZnであり、Mn, Coを補因子としてもそれぞれ70%, 30%の活性を示すことが明らかになった。類縁のデアセチラーゼとのホモロジーから、天然で用いている金属補因子はZnであると考えられる。なお、組換え大腸菌の培地に金属を添加してもTr_DAACに金属は取り込まれなかった。 次に、基質となるN-アセチル-D-アミノ酸の特異性を調べた。活性の検出は、反応によって遊離する酢酸を酵素法により定量することにより行った。その結果、Tr_DAACの最適な基質はAc-D-Lysであり、Ac-D-Arg, Ac-D-Asnに対しても55~70%の活性を示すことが明らかとなった。Gluなどの酸性アミノ酸や疎水性アミノ酸の誘導体に対しては活性を示さなかった。 以上により、Tr_DAACの酵素学的性質を明らかにできたとともに、良質の回折をする結晶作製法の指針となる。
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