H29年度は、蛍光偏光の変化を利用してウアバゲニンと肝X受容体(LXR)の結合を直接的に評価する検討を行った。タンパク側としてLXRのリガンド結合ドメイン(LXR-LBD)をリコンビナントタンパクとして発現させることを検討し、最終的にN末端にGSTタグを結合させて調製したLXR-LBDを用いた。蛍光リガンドをこのLXR-LBDに対して添加することで蛍光偏光の上昇が認められ、そこへウアバゲニンを追添加することで上昇した蛍光偏光が濃度依存的に減少することが認められた。以上の結果から、ウアバゲニンは既知リガンドと同様にLXR-LBDに結合することが示された。 一方、生物活性については、一般的なLXRリガンドが引き起こすとされている脂肪肝について検討した。培養細胞系では、脂肪肝誘導に関連すると考えられている遺伝子群の発現量を精査したところ、T0901317処理では有意に上昇していたのに対して、ウアバゲニンではコントロールと同等であった。さらに、マウスを用いたin vivo動物実験の検討においても、T0901317投与群では肝肥大および肝トリグリセリド貯留量の増加を引き起こしたが、ウアバゲニン投与群ではコントロール群とほぼ同等かあるいは若干低下している傾向が見られた。 研究期間全体を通して、ウアバゲニンが、肝X受容体リガンドとして機能し、腎臓での上皮性ナトリウムチャネルの発現量を低下させることを明らかにするとともに、既知リガンドとは異なり脂肪肝誘導を引き起こさないことも突き止めた。腎臓でのナトリウムチャネルの発現量低下はNa再取り込みの抑制に繋がることから、ウアバゲニンは、脂肪肝誘導といった副作用を示さないLXRを介した新規利尿降圧剤としての開発が期待される。
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