研究実績の概要 |
細胞内におけるタンパク質の異常・機能破綻は、多くの疾患の発症を起こす原因となる。そのため、それらのタンパク質の挙動の解析や、機能制御は重要であり、それらのタンパク質に結合する合成リガンドの探索が精力的に行われている。当研究室では、化学合成したライブラリから、標的タンパク質に相互作用する分子を効率的に探索する手法として、リガンド-タンパク質の相互作用を酵素活性として読み出す新しい検出方法(IDNCL-PTS, IDNCL-ER)を開発してきている。この方法を用いて、がん関連タンパク質である、RasやSH2, Pin1などに結合する合成リガンドの探索を進めている。 平成30年度は主に、これまでに開発した、DNCL-ERに基づくルシフェラーゼ活性を指標とした新規検出系を用いて獲得したPin1結合ペプチドの結合特性の評価を行った。ライブラリとして、天然型であるLアミノ酸だけでなく、Dアミノ酸を含む計26種類のアミノ酸を使い、6アミノ酸残基からなるポジショナルスキャニング(PS)ペプチドライブラリを合成した。合成したライブラリのN末端には、オキシアミノ基を配置し、ルシフェラーゼペプチド断片タグに配置したアルデヒド基との特異的な連結により、ペプチドタグを導入したPSライブラリを作製した。Pin1タンパク質を標的として、NanoLucルシフェラーゼの活性を指標としたスクリーニングを行ったところ、各ポジションにおいてPin1との結合に寄与しているアミノ酸の候補があがった。これを基に結合候補ペプチドを4種類合成し、相互作用について評価した。
|