研究課題/領域番号 |
15K01819
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
近藤 輝幸 京都大学, 学際融合教育研究推進センター, 教授 (20211914)
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研究分担者 |
木村 祐 京都大学, 学際融合教育研究推進センター, 准教授 (90566027)
山田 久嗣 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 講師 (80512764)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 磁気共鳴イメージング / 光超音波イメージング / 常磁性金属 / ナノ粒子 / マンガン酸化物 / 糖 / 分子プローブ / 生体適合性 |
研究実績の概要 |
現在、臨床現場で広く利用されている磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging, MRI) は、生体深部の撮像が可能であるが、感度が低く、多量の造影剤の投与、あるいは繰り返し投与が必要であるという問題点を有している。一方、近年注目されている光音響イメージング (Photoacoustic Imaging, PAI)は、撮像範囲が表層 2 ~ 3 cm の範囲に限られるものの、高感度かつ高解像度でのイメージングが可能である。 そこで研究代表者は、癌の早期発見と診断確度の向上を目指し、MRI と PAI の双方のイメージング法に有効な MR-PA デュアルイメージングプローブの開発に取り組んでいる。 平成 27 年度は、常磁性金属の中で 2 価のマンガン(Mn2+)に注目し、まず、水分散可能な 2 種類のマンガン酸化物(Mn3O4 および MnO、XRD で構造確認)ナノ粒子の合成を行い、特に、MnO ナノ粒子が PA-MR デュアルイメージングプローブとして極めて有効であることを明らかにした。次に、この MnO ナノ粒子について、高い生体適合性と親水性を有する糖誘導体を表面修飾剤として用いた結果、D-glucosamine が最も適切な表面修飾剤であることが明らかとなり、D-glucosamine 修飾 MnO ナノ粒子プローブを用いる ddY マウスの in vivo での MR および PA イメージングに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、高い生体適合性と親水性を有する糖誘導体を表面修飾剤とする粒径約 100 nm の水分散可能な 9 種類の MnO ナノ粒子を合成した。その中で、特に、D-glucosamine 修飾 MnO ナノ粒子が、現在、臨床現場で使用されている造影剤 Magnevist の約 4 倍の高い T1 短縮能 r1 を示すとともに、近赤外パルスレーザー光の照射により、最も強い PA 信号を発生することを明らかにした。 以上の様に、本研究の当初の目的であった PA-MR デュアルイメージングプローブとして、D-glucosamine 修飾 MnO ナノ粒子プローブが最適であることを明らかにし、基礎的研究についてはほぼ完了した。次年度以降は計画を前倒しして、動物実験による D-glucosamine 修飾 MnO ナノ粒子プローブの血中滞留性、体内動態(臓器蓄積性)、および腫瘍集積性の評価を行うとともに、MRI および PAI のいずれの画像化においてもさらなる感度の向上を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
平成 27 年度までの研究で明らかにした「糖修飾 MnO ナノ粒子プローブ」の紫外可視吸収スペクトルを測定し、研究代表者が既に開発に成功しているゼラチン修飾 Gd2O3 ナノ粒子のスペクトルと比較する。大きなモル吸光係数と可視光領域(長波長)の吸収が観測されれば、ゼラチン修飾 Gd2O3 ナノ粒子より、糖修飾 MnO ナノ粒子の方が PA イメージングに有効と考えられる。一方、MRI については、糖修飾 MnO ナノ粒子プローブでは、Mn2+ の不対電子の配置から、高い造影能(r1 および r2)を示すことが予想され、陽性および陰性の両性 MRI 造影剤としての有効性が期待される。 さらに、「D-glucosamine 修飾 MnO ナノ粒子プローブ」を健常マウスに尾静脈投与し、血中滞留性と体内動態(臓器蓄積性)を明らかにし、疑陽性が観測されないことを確認する(バックグラウンドとして、内在性の Mn2+ が観測されるため。)。より詳細には、マウスの排泄物(糞・尿)を MRS、LC/ESI-TOF MS およびMALDI-TOF MS、原子吸光光度計により分析し、本ナノ粒子の排泄機構を明らかにする。これらの動物実験の結果をフィードバックし、より高機能性の「糖修飾 MnO ナノ粒子プローブ」を創製する。また、必要であれば、MnO ナノ粒子表面の D-glucosamine のアミノ基をトリガーとして、ポリエチレングリコール(PEG)鎖の導入、および腫瘍抗原特異的抗体の導入を行い、血中滞留性の向上を目指すとともに、腫瘍へのターゲティング機能を有する革新的な分子プローブ型「糖修飾 MnO ナノ粒子プローブ」を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者に配分した研究費(徳島大学・山田久嗣講師)300,000 円に端数の残額が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記残額の1,045円を、次年度に繰り越すが、研究計画自体に変更はない。
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