本年度は合成糖鎖を磁気粒子に固定化する反応条件の検討,糖鎖固定磁気粒子ライブラリ使用して糖鎖認識ヒト抗体IgGの選抜に取り組んだ。6種類のKdoを含むオリゴ糖を固定化した磁気粒子より,糖鎖結合IgGを得ることが出来,Re-LPSを用いたアフィニティークロマトグラフィーより選抜したIgGとほぼ同量の抗体を得ることが出来た。得られたIgGを使用して野生株および変異株のLPSに対する結合能を評価したところ,2-4結合を有するKdo2糖から選抜したIgGが属に対して最も幅広い結合能を示すことを見いだした。 まとめ 本研究では,複合糖脂質LPSのコア糖鎖の機能解明に向けた糖鎖プローブの化学合成に取り組み,Neisseria属LOS部分コア糖鎖合成を達成し,合成部分コア糖鎖を認識するヒト抗体の選抜を行いその性質を検討した。オリゴ糖合成ではビシナルジオールで分岐したHeptoseおよびKdoの効率的な合成法を確立することができ,幅広い属のLPS/LOSのコア糖鎖合成の基盤が確立できた。特にビシナルジオール位で分岐した構造が連続する酸性オリゴ糖鎖の立体選択的および収斂的合成は世界で初めての合成例で,汎用性が高い合成手法である。本方法により14種類のNeisseria属LOSコア糖鎖の酸性および中性部分糖鎖ライブラリ合成を達成した。合成糖鎖を使用してマウスマクロファージ細胞株の免疫賦活活性を検討したが,顕著な影響を示さなかったため,コア糖鎖のみでは免疫系に対する機能は少ないことが示唆された。また合成糖鎖を磁気粒子に固定化し糖鎖結合ヒト抗体IgGの選抜を行い,市販ヒトIgG(10 mg)より3-7 μgのIgGを得ることができた。これらの天然由来LPSに対する結合能を評価したところ,2-4結合を有するKdo2糖から選抜した抗体が最も幅広い結合活性を示した。
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