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2016 年度 実施状況報告書

筋ジストロフィー治療のためのバイパス糖鎖の合成研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K01823
研究機関鳥取大学

研究代表者

田村 純一  鳥取大学, 地域学部, 教授 (30221401)

研究期間 (年度) 2015-10-21 – 2018-03-31
キーワードジストログリカン / 筋ジストロフィー / バイパス糖鎖 / 糖鎖合成
研究実績の概要

有効な治療方法が見つかっていない難病「筋ジストロフィー」の一種である「糖鎖異常型筋ジストロフィー」は、基底膜上のラミニンと細胞膜上のαジストログリカンを連結する特徴的な糖鎖(ポストリン酸糖鎖)が正常に生合成されないことに起因する。ポストリン酸糖鎖を含む糖鎖コンジュゲートを別途再構築して投与することでバイパス型治療が期待できるが、ポストリン酸糖鎖の分子構造は十分に明らかになっていない。本研究は糖鎖異常型筋ジストロフィー治療を目的として、(1)ラミニンと親和性をもつポストリン酸糖鎖の微細構造を化学合成により明らかにし、(2)ラミニンと効果的に結合できるバイパス糖鎖を合成する。糖鎖末端にαジストログリカンと親和性の高い置換基を装着させることで、従来にない糖鎖医薬の開発を目指す。
本申請は年度途中での追加採択になったため、初年度は学生やポスドクを本研究課題に配置することができず、実施期間も短く、目立った実績を挙げることができなかった。2016年度は卒論生1名を配置して実施を急いだ。最近、ポストリン酸糖鎖はキシロースとグルクロン酸がからなる二糖(-4Xylα1-3GlcAβ1-)繰返し構造であると提唱された。このうちαキシロシドの立体選択的合成が最も困難な箇所であるため、上述の二糖を繰返し単位として初めに合成し、βグルクロニドで二糖単位間の縮合を行うこととした。
繰返し二糖単位構成糖であるキシロース部分とグルクロン酸部分をそれぞれ適切な保護基を装着した前駆体として合成した。これらの立体選択的縮合を種々検討した結果、α1-3結合した二糖の合成に成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本申請は年度途中での追加採択になったため、初年度は学生やポスドクを本研究課題に配置することができず、実施期間も短く、目立った実績を挙げることができなかった。2016年度は卒論生1名を配置して実施を急いだ。二糖ユニットの合成に成功するなど、徐々に遅れを取り戻しているが、当初予定よりもまだ遅れていると言わざるを得ない。

今後の研究の推進方策

本研究の目的は、「ポストリン酸糖鎖の化学的再構築を行い、バイパス化合物としての機能を検証する」ことにある。この目的を達成するため、キシロースとグルクロン酸からなる二糖ユニット(α-キシロシル-β-グルクロン酸)が繰返し結合した構造をもつポストリン酸糖鎖を原型とするバイパス糖鎖の化学的構築を行う。平成28年度に二糖ユニットの骨格形成経路を確立したので、平成29年度は、20糖(10回繰り返し)までの合成を目標として、それらの逐次的な縮合によりオリゴマー化を進める。途中の短鎖類縁体もライブラリーとして保存し、鎖長の違いによる結合能の違いの検証に使用する。また、ELISAを利用して糖鎖とラミニンとの結合活性を確認するため、オリゴ糖の還元末端にビオチンを結合させる。あわせて二糖ユニットの量的確保を行う。
ジストログリカンのリガンドであるラミニンは、糖鎖との結合部位をタンデム型に配置している。ラミニンは結合する糖鎖(長鎖)の一部とスキップしながら結合していると考えられるので、短いオリゴ糖で構成される(a)直線型(二糖ユニットの両端をそれぞれ脱保護と酸化し、NH2とCOOHに誘導)と(b)星型クラスター(四糖にリンカーを結合し、その末端を束ねる)分子の合成を検討する。いずれのクラスター分子も還元末端側でジストログリカン親和性分子と結合させる。
合成糖鎖ができ次第、連携研究者とともに、糖鎖修飾細胞に対してラミニンの集積を評価し、次いで、糖鎖還元末端にジストログリカンと親和性のある抗体や特異的ペプチドを結合させ、同様の検討を行う。十分な効果が得られれば、連携研究者等と協力して、ラミニンとの結合評価を行うほか、疾患マウスに対して投与して病態改善効果を検証する。糖鎖医薬として実証されれば、ポスト遺伝子治療として医学薬学的に大きな波及効果が期待できる。

次年度使用額が生じた理由

採択が半年遅れたため、研究開始が遅れた。そのため使用額が当初計画よりも少なくなっている。研究後半にアッセイ等での出費や国際学会等への派遣が予定されているので、予算を残してある。一年遅れと考えると使途状況は順調と言える。

次年度使用額の使用計画

研究後半にアッセイ等での出費や国際学会等での発表による出張旅費が予定されている。研究は比較的順調に進んでいるため、最終年度までに全額使用する計画である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (9件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Degree of Suppression of Mouse Myoblast Cell Line C2C12 Differentiation Varies According to Chondroitin Sulfate Subtype2016

    • 著者名/発表者名
      Katsuhiko Warita, Nana Oshima, Naoko Takeda-Okuda, Jun-ichi Tamura and Yoshinao Z. Hosaka
    • 雑誌名

      Marine Drugs

      巻: 14 ページ: 193-199

    • DOI

      10.3390/md14100193

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 魚介類不可食部に含まれるコンドロイチン硫酸~廃棄物の高付加価値化~2016

    • 著者名/発表者名
      田村純一
    • 雑誌名

      化学と生物

      巻: 6 ページ: 372-374

    • 査読あり
  • [学会発表] 野生のニホンジカ鹿茸に含まれるコンドロイチン硫酸の分析2017

    • 著者名/発表者名
      田村純一、◯三谷真鈴、植村優那、大村優華、谷明里、武田-奥田尚子
    • 学会等名
      日本農芸化学会2017年度大会
    • 発表場所
      京都女子大学(京都府京都市)
    • 年月日
      2017-03-18 – 2017-03-18
  • [学会発表] 異なる生息環境下での鹿茸に含まれるコンドロイチン硫酸の比較分析2017

    • 著者名/発表者名
      ◯武田-奥田尚子、全炳台、李致鎬、金守基、田村純一
    • 学会等名
      日本農芸化学会2017年度大会
    • 発表場所
      京都女子大学(京都府京都市)
    • 年月日
      2017-03-18 – 2017-03-18
  • [学会発表] ビオチン化コンドロイチン硫酸オリゴ糖の合成2017

    • 著者名/発表者名
      ◯上村明寿美、松下健也、中田有美、武田-奥田尚子、田村純一
    • 学会等名
      日本農芸化学会2017年度大会
    • 発表場所
      京都女子大学(京都府京都市)
    • 年月日
      2017-03-18 – 2017-03-18
  • [学会発表] 生息環境の異なる魚類に含まれるコンドロイチン硫酸の分析2017

    • 著者名/発表者名
      ◯田村純一、上田健人、武田-奥田尚子
    • 学会等名
      日本農芸化学会2017年度大会
    • 発表場所
      京都女子大学(京都府京都市)
    • 年月日
      2017-03-18 – 2017-03-18
  • [学会発表] 伸長期におけるシカ角の組織学的特徴とコンドロイチン硫酸産生細胞の同定2016

    • 著者名/発表者名
      ◯鈴木愛実、武田-奥田尚子、田村純一、割田克彦、保坂善真
    • 学会等名
      第159回日本獣医学会学術集会
    • 発表場所
      日大生物資源科学部(神奈川県藤沢市)
    • 年月日
      2016-09-06 – 2016-09-06
  • [学会発表] 軟骨魚由来コンドロイチン硫酸の含有量と組成分析2016

    • 著者名/発表者名
      ◯武田-奥田尚子、寳來佐和子、田村純一
    • 学会等名
      第35回日本糖質学会年会
    • 発表場所
      高知市文化プラザ(高知県高知市)
    • 年月日
      2016-09-01 – 2016-09-03
  • [学会発表] アフリカツメガエル消化管のコンドロイチン硫酸組成とコンドロイチン硫酸基転移酵素の発現解析2016

    • 著者名/発表者名
      ◯岡秀俊、田村純一、武田-奥田尚子、割田克彦、保坂善真
    • 学会等名
      第35回日本糖質学会年会
    • 発表場所
      高知市文化プラザ(高知県高知市)
    • 年月日
      2016-09-01 – 2016-09-03
  • [学会発表] コンドロイチン硫酸D型オリゴ糖の合成2016

    • 著者名/発表者名
      ◯上村明寿美、松下健也、中田有美、武田-奥田尚子、田村純一
    • 学会等名
      第35回日本糖質学会年会
    • 発表場所
      高知市文化プラザ(高知県高知市)
    • 年月日
      2016-09-01 – 2016-09-03
  • [学会発表] 魚介類に含まれるコンドロイチン硫酸の組成分析2016

    • 著者名/発表者名
      ◯武田尚子、田村純一
    • 学会等名
      第30回海洋生物活性談話会
    • 発表場所
      鳥取大学(鳥取県鳥取市)
    • 年月日
      2016-05-14 – 2016-05-15
  • [図書] インターローカル つながる地域と海外2017

    • 著者名/発表者名
      田村純一
    • 総ページ数
      6
    • 出版者
      筑波書房

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公開日: 2018-01-16  

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