研究課題/領域番号 |
15K01823
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
田村 純一 鳥取大学, 農学部, 教授 (30221401)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | ジストログリカン / バイパス糖鎖 / 糖鎖合成 |
研究実績の概要 |
有効な治療方法が見つかっていない難病「筋ジストロフィー」の一種である「糖鎖異常型筋ジストロフィー」は、基底膜上のラミニンと細胞膜上のαジストログリカンを連結する特徴的な糖鎖(ポストリン酸糖鎖)が正常に生合成されないことに起因する。本研究は糖鎖異常型筋ジストロフィー治療を目的として、(1)ラミニンと親和性をもつポストリン酸糖鎖の微細構造を化学合成により明らかにし、(2)ラミニンと効果的に結合できるバイパス糖鎖を合成することで、従来にない糖鎖医薬の開発を目指す。 最近Campbellらにより、ポストリン酸糖鎖はキシロースとグルクロン酸からなる二糖(-4Xylα1-3GlcAβ1-)繰返し構造であると提唱された。このうちαキシロシドの立体選択的合成が最も困難な箇所であるため、上述の二糖を繰返し単位として初めに合成し、βグルクロニドで二糖単位間の縮合を行うこととした。 繰返し二糖単位構成糖であるキシロースとグルクロン酸をそれぞれ適切な保護基を装着した前駆体として合成した。これらの立体選択的縮合を種々検討した結果、アグリコンデリバリー法によりα1-3結合した二糖の立体選択的合成に成功した。この二糖をトリクロロアセトイミデート(二糖供与体)と二糖受容体にそれぞれ誘導し、互いに縮合することで、β選択的かつ位置選択的に目的とする四糖を得ることができた。さらに、この四糖は完全に脱保護することができ、当該オリゴ糖の最初の合成に成功した。これによりオリゴマー化の道を開くことができた。収率の向上が課題として残っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有効な治療方法が見つかっていない難病「筋ジストロフィー」の一種である「糖鎖異常型筋ジストロフィー」は、基底膜上のラミニンと細胞膜上のαジストログリカンを連結する特徴的な糖鎖(ポストリン酸糖鎖)が正常に生合成されないことに起因する。ポストリン酸糖鎖を含む糖鎖コンジュゲートを別途再構築して投与することでバイパス型治療が期待できるが、ポストリン酸糖鎖の分子構造は十分に明らかになっていない。本研究は糖鎖異常型筋ジストロフィー治療を目的として、(1)ラミニンと親和性をもつポストリン酸糖鎖の微細構造を化学合成により明らかにし、(2)ラミニンと効果的に結合できるバイパス糖鎖を合成する。糖鎖末端にαジストログリカンと親和性の高い置換基を装着させることで、従来にない糖鎖医薬の開発を目指す。 最近、ポストリン酸糖鎖はキシロースとグルクロン酸からなる二糖(-4Xylα1-3GlcAβ1-)繰返し構造であると提唱された。このうちαキシロシドの立体選択的合成が最も困難な箇所であるため、上述の二糖を繰返し単位として初めに合成し、βグルクロニドで二糖単位間の縮合を行うこととした。 繰返し二糖単位構成糖であるキシロースとグルクロン酸をそれぞれ適切な保護基を装着した前駆体として合成した。これらの立体選択的縮合を種々検討した結果、α1-3結合した二糖の立体選択的合成に成功した。この二糖を二糖供与体と二糖受容体にそれぞれ誘導し、互いに縮合することで、立体かつ位置選択的に四糖を得ることができた。この四糖は完全に脱保護でき、当該オリゴ糖の最初の合成に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、「ポストリン酸糖鎖の化学的再構築を行い、バイパス化合物としての機能を検証する」ことにある。この目的を達成するため、キシロースとグルクロン酸からなる二糖ユニット(Xylα1-3GlcA)が繰返し結合した構造をもつポストリン酸糖鎖を原型とするバイパス糖鎖の化学的構築を行う。平成29年度に二糖ユニットを用いて最小のオリゴマーを得ることができたので、平成30年度は、16糖(8回繰り返し)の合成を目標として、二糖ユニットの逐次的な縮合によりオリゴマー化を進める。途中の短鎖類縁体もライブラリーとして保存し、鎖長の違いによる結合能の違いの検証に使用する。また、ELISAを利用して糖鎖とラミニンとの結合活性を確認する。その一方で、各工程の合成収率を向上させつつ二糖ユニットの量的確保を行う。 合成糖鎖ができ次第、研究協力者とともに、糖鎖修飾細胞に対してラミニンの集積を評価し、次いで、糖鎖還元末端にジストログリカンと親和性のある抗体や特異的ペプチドを結合させ、同様の検討を行う。十分な効果が得られれば、研究協力者と協力して、ラミニンとの結合評価を行うほか、疾患マウスに対して投与して病態改善効果を検証する。糖鎖医薬として実証されれば、ポスト遺伝子治療として医学薬学的に大きな波及効果が期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開始が遅れていたため平成29年度までの使用額が当初計画よりも少なくなっているが、平成29年度に研究が大きく進展した。平成30年度は消耗品の購入に加えて、これまでに得られた結果の国際学会等での発表のための旅費に使用する。研究は順調に進んでおり、本年度末までに全額使用する計画である。
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