研究課題
これまでの研究で同定した化合物の構造を検討したところ、修飾可能なカルボキシル基が存在していたので、細胞膜透過性を考慮に入れて、このカルボキシル基を鎖長の異なるアルコールでエステル化した化合物を多数入手した。これらの化合物のCaMキナーゼホスファターゼ阻害活性を検討したところ、メチル、エチル、プロピルなどの比較的短鎖のエステル化合物は強い阻害活性を示したが、鎖長が長くなるにつれ、阻害活性・阻害特異性がともに低下する傾向がみられた。次に、阻害活性の強い物について、浸潤・遊走活性が高いヒト乳がん細胞株MDA-MB-231をモデルとして、ボイデンチャンバーを用いた細胞遊走アッセイによってがん細胞の遊走阻害活性を調べた。その結果、CaMキナーゼホスファターゼ阻害活性の強かったメチル、エチル、プロピルなどのエステル化合物が顕著な遊走阻害活性を示した。更にMTTアッセイによってこれらの化合物の細胞毒性を調べたところ、これらは遊走阻害を示す濃度で全く細胞毒性を示さなかった。従って、これらの化合物は、細胞毒性の低い新しいタイプの転移浸潤阻害剤の候補物質となることが期待される。本研究で得られた知見を元に、今後、更に可能な修飾を施すことにより、細胞膜透過性や阻害特異性の向上を目指した新規阻害剤の創製を目指す。また、本研究では細胞遊走の阻害を指標としたが、有効な化合物を創製できれば、マトリゲルを用いた浸潤阻害活性についても検討していきたい。
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