研究課題
本研究では、単一生細胞での細胞内遺伝子センシング技術を開発しそれをチップデバイス化することで、多数の細胞内遺伝子活動を並列的に同時観測可能とし、簡便かつ迅速な遺伝子診断技術の構築を目指す。最終的には、臨床や環境の現場で使用可能な一次スクリーニング技術として統合し、テーラーメード医療や化学物質の生体影響評価に貢献する。この課題のもと、H29年度は、前年度までの成果から明らかになった表面プラズモン共鳴(SPR)イメージング法および電気化学的手法に基づくデバイス化検討に加え、生体影響評価に供するバイオマーカー探索を行った。デバイス化検討では、RNAバイオマーカー配列を有するターゲット核酸との分子認識により、電気化学およびSPRシグナルを発するマルチセンサチップを開発し、RNAバイオマーカー配列4種の識別に成功した。ここで、1つの検出系を2つの検出法により測定することで高感度・高選択検出の基礎技術に繋がることを見出した。また、生体影響評価用バイオマーカー探索では、化学物質の刺激に対して鋭敏に応答するRNAバイオマーカー探索を行った。ベンゼンなど9種類の有害化学物質を曝露したマウスES細胞の全RNAからチップデバイス化に有利な短鎖RNAを抽出し、RNA発現量変化を測定・解析して化学物質評価用バイオマーカー(曝露後増加:7種、減少:5種)を見出した。この解析では、短鎖RNA解析に特化した解析手順構築と条件最適化を行い、短鎖RNAバイオマーカーの探索に成功した。
2: おおむね順調に進展している
H29年度は、H28年度におけるSPRイメージング法の成果を受けて、SPRイメージング法と電気化学的手法の両方に基づくデバイス化検討を行い、電気化学およびSPRシグナルを発するマルチセンサチップを開発し、RNAバイオマーカー配列4種の識別に成功した。また、化学物質の刺激に対して鋭敏に応答するRNAバイオマーカーの探索を行い、有害化学物質の曝露に応答する化学物質評価用RNAバイオマーカー(曝露後増加:7種、減少:5種)を見出した。これは、現場利用可能な一次スクリーニング技術としての基礎技術として重要な成果である。なお、研究協力者(海外)所有のSPRイメージング装置が利用不可能となったため、当該装置と同等以上の性能を有する装置の新規手配に時間を要したことから、H30年度への研究機関延長が必要となった。以上のことから、1年の延長を含みつつも、おおむね順調に進展していると考えている。
SPRイメージング法および電気化学的手法によるRNA検出評価実験、生細胞を用いたRNA抽出実験、チップデバイス上での生細胞からのRNA抽出実験と生細胞由来RNA検出評価実験、研究成果取りまとめを行う。併せて、研究終了後の実用化検討に向けて、モニタリングすべきバイオマーカーの探索を推進する。
H30年度に研究消耗品等の購入に使用するため。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件)
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