研究課題
ラットに学習を行わせると、学習の習熟に伴い皮質の神経回路再編が起こり、LTP/LTD可塑性変化とともに回路の組織学的形態変化が起こることが知られている。核磁気共鳴法(MRI)の撮像法の一つである水拡散強調画像法は、生体環境内の自由水分子のブラウン運動を計測することで、組織内環境の変化を推定できる。我々は、学習で起こる皮質神経回路の形態変化をMRIで質神経回路の可塑性変化を観察できるか検討した。我々は、ラットにバーンズ空間迷路学習を行わせ、学習の前後で水拡散能の変化を観察した。コントロールとして、その期間中は学習をしない群を別に設けた。空間迷路学習は、1日2試行×連続6日間(計12試行)で行った。生体ラット脳のMRI撮像を学習の前後に行い、学習前に対して学習後の皮質水拡散能の変化を算出した。1日目の成績と比べ、6日目最終日の成績は有意に改善した(p < 0.001)。学習前に比べて学習後で海馬の水拡散能の上昇が認められた。非学習群ではその期間中に水拡散能の変化が認められなかった。学習群の水拡散能の変化は、行動の成績改善度と有意な正相関が得られた(単回帰解析、R2 = 0.36, p = 0.03)。
2: おおむね順調に進展している
空間学習の行動学的指標とそれと関連する海馬MRI水拡散能変化に関係性があることを示した。今後、電気生理学的な可塑性変化とMRI信号変化の関係性を検証する。
ラットの学習モデルを用いて、学習と関係のある海馬の水拡散能変化を捉えることに成功した。次年度には、既報に倣い、空間学習による海馬の長期増強・長期抑圧と神経回路の形態変化、水拡散能変化との関係性を見る。
今年度の実験は、前年度購入した実験器具等を活用して行なうことができ、今年度請求予算の消化を抑えることができた。次年度に計画する電気生理学的実験、組織実験に使用する試薬や消耗物品に充て、次年度の研究運営を円滑に行うために使用する。
ラット学習モデルを用いて、MRI水拡散能変化と関係する組織学的な変化を検索する。電気生理学的な可塑性変化とMRI水拡散能変化との関係性を見る。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
Brain Stimul.
巻: 9(6) ページ: 859
10.1016/j.brs.2016.01.008