研究課題
核磁気共鳴(MRI)技術はヒト脳機能を調べるうえで必要不可欠な技術となった。最大の利点は、全脳探索できる点である。記憶の形成過程で全脳回路を巻き込む。しかし、未だその全容は明らかでない。ヒト実験系では、それを捉える技術は未だ提案されていない。学習時の神経活動から関連領域を推定するに留まる。記憶形成には、神経回路の電気生理学的な可塑性変化(LTP、LTD)と共に回路構造のリモデリングが関与する。回路の微視的な形態構造変化で自由水分子の動きが制限もしくは解除されると考えられている。MRIで組織の水拡散脳を評価することができる。記憶形成に伴う回路リモデリングでMRI変化が起こるか分かっていない。MRI変化が神経可塑性変化と形態リモデリングの関係を検証する第一歩として、動物ラットを用いて記憶と関係するMRI変化を同定することに成功した。ラット空間学習の記憶に海馬が関与する。バーンズ迷路学習を行わせ、その前後で海馬組織の水拡散が変化するかをMRIで計測した。その変化が記憶成績と相関するかを示し、水拡散変化が記憶と関係性を検証した。学習後、海馬組織で水拡散の上昇が認められた。CA1領域に跨る部位に相当した。その上昇度が高い個体ほど1週間後に評価した学習成績が優れていた。これは、海馬の水拡散変化が記憶形成と関係することを示唆した。海馬CA1領域は、障害実験で記憶形成に関与する部位として知られている。同部位ではLTDが起こり、記憶形成を調整する。今後、MRI変化がLTDに伴う神経回路の微細構造変化と関係があるか、薬剤阻害実験で明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Bioelectromagnetics
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