研究課題/領域番号 |
15K01835
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
飯ヶ谷 嘉門 昭和大学, 医学部, 普通研究生 (80445204)
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研究分担者 |
鬼丸 洋 昭和大学, 医学部, 客員教授 (30177258)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 交感神経 / 摂食 / 視床下部 / VMH / 脳スライス標本 / 動脈潅流標本 |
研究実績の概要 |
食事摂取量・行動は中枢神経系で調節されている。特に視床下部腹内側核(ventromedial hypothalamus:VMH)は摂食と交感神経に強く影響する領域である。これまでVMH内の神経活動は持続的発火を示すtonicな活動と考えられており、多数報告されている。しかし、我々は電気生理学的実験と光学測定法を用いて、新生児・若年(生後5日目-14日目)ラットのVMH内に、一定のリズミックバースト活動(VMHオシレーション)が存在することを世界で初めて発見した。さらに、このVMHオシレーションのバースト頻度は、グルコース濃度や各種摂食ぺプチドにより変化した。 今年度の研究目標として生体(in vivo)とin vitro標本のギャップを埋める除皮質in situ動脈潅流標本を作製し、前年度まで得られていたVMHのリズミックバーストが交感神経活動に結びついているかを同一標本内で証明することを目標とした。 除皮質in situ動脈潅流標本では、VMH神経活動、横隔神経活動、交感神経幹からの神経活動を記録した。交感神経幹からの神経活動は横隔神経活動と同じ周波数成分を含むほか、VMHリズミックバーストに類似した低周波数成分を含んでいた。パワースペクトラル解析によるVMHの低周波数成分のピークは0.060 ± 0.019 Hzであり、同様に得た交感神経幹からの周波数成分は0.056 ± 0.019 Hz だった。視床下部スライス標本で、ガラニンはVMHの活動を抑制することが分かっていたので、除皮質in situ動脈潅流標本において、ガラニンをVMHに局所的に潅流したところ、VMHオシレーションの抑制に伴い、交感神経に見られていた低周波成分が40%以下に抑制された。 以上のことから、VMHオシレーションは交感神経活動の特に低周波成分の形成に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究で、除皮質in situ動脈潅流標本において、VMHリズミックバーストと交感神経活動が実際に相関していることが強く示唆され、概ね研究目的は到達できていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
≪電気生理学的実験≫除皮質in situ動脈潅流標本において、ガラス微小管を用いて、VMH内に摂食ペプチドあるいは高濃度グルコースや低濃度グルコースをmicroinjectionし、交感神経活動(交感神経幹及び褐色脂肪細胞・心臓・腎臓交感神経など)がどのように変化するかを調べる。 《免疫組織学的実験》生体は低血糖時にVMHのsteroidogenic factor 1 neuron(SF1)を介して交感神経活動を亢進させ、カウンターホルモンを分泌させて血糖を上昇させようとする。(Sabra-Makke L, etc. Proc Natl Acad Sci U S A. 2013;110(11):4333-8). Whole cell patch clamp法で記録されたVMHリズミックバースト活動neuronをLucifer yellow で標識したのち、抗SF1染色による2重染色を行い、VMHリズミックバーストがSF1 neuronであるかどうかを検証する。そのほか,バースト形成ニューロンの神経修飾物質レセプターの発現などを調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年3月に学会参加があり,その旅費の支払いが年度末にかかったため,その分が繰り越された.
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次年度使用額の使用計画 |
事務手続き上,科研費が使用可能となった時点で,支払い請求を行う.
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