研究課題/領域番号 |
15K01837
|
研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
大西 克典 久留米大学, 医学部, 助教 (10626865)
|
研究分担者 |
河原 幸江 久留米大学, 医学部, 准教授 (10279135)
西 昭徳 久留米大学, 医学部, 教授 (50228144)
大西 陽子 久留米大学, 医学部, 助教 (70727586)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 転写因子 / うつ病 / 薬物依存症 / 行動実験 |
研究実績の概要 |
薬物依存症というのは、一部の芸能人などで報道されているように社会的問題として大きくとらえられがちですが、一般の患者さんの苦しみや病態などはほとんど報道されません。 そのほとんどが何らかの環境的、社会的ストレスから徐々にむしばまれていき、簡単には脱出できないことは想像できると思います。その苦しみや欲動から解放される方法を探すために薬物依存というものを研究するとなったとき、動物を使うわけですが、動物にとっては単に気持ちよくなる状態に過ぎず、そこに社会的問題や不利益が発生するわけではないわけです。単に気持ちよくなるものを防ぐだけでは、無快感症になるための作用を探していることになるかもしれません。 そこで我々はストレスを受けた後の依存症に注目して研究しています。ストレスが受けた後に依存性が強くなるという症状はマウスでもヒトでも同じだからです。 依存性などの報酬効果には、VTAと呼ばれる脳幹部と側坐核と呼ばれる大脳基底核のドーパミン神経の作用が重要であることがと知られています。そこで我々はその側坐核で薬物依存の時に上昇するdeltaFosBと呼ばれる転写因子がストレス後のコカイン依存性を上げることを見出し、論文として発表しました。しかし、この方法はウイルスを脳内に注入して作用を調節しているため、臨床応用するにはハードルが高いため、もう少し導入しやすい治療法を模索し、薬物による治療と、食事による治療を試みました。 結果、薬物による治療には効果がなく、食事による治療も効果が出ていなかったのですが、食事の期間を延ばすことで、抑制効果を認めることを見出しました。これは、抗うつ薬が臨床においても、2週間以上内服を続けないと効果がないことと似ており、同じような作用機序が働いている可能性があります。 現在、これらの効果と側坐核における標的蛋白質の発現量との関係を調べているところです。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ストレス後の依存症の大枠の分子メカニズム、研究方法、治療方法までほぼ確立出来ている状態だが、偶然、全く別の治療方法も発見しているため、その分子メカニズムの解明を進める予定である。 本来の計画では、下流のもう少し細かい分子標的を追いかける予定であったが、大元の神経ネットワークの働きが古典的に信じられてきたフレームと異なる可能性を示すデータを得たため、現在はその詳細なメカニズムを追求している。
|
今後の研究の推進方策 |
ストレス後の依存症と酸化ストレス反応、およびそれに対する治療法までは明らかに出来たので、その分子メカニズムを明らかにするデータを取って論文としてまとめる予定であり、現在、執筆中である。それとは別に、通常の依存症のモデル実験においても、専門の科学者の予想とは異なるデータが複数取れており、それらは別のテーマとして実験を進めている。一つは近いうちに論文化出来る状態である。 その他、派生して得られた病態メカニズムを示唆するデータがいくつかあるため、それらは別途違う形でまとめる予定である。データ自身は8割方すでに取れている。 今後の方針としては、揃っていないデータを取るとともに、新しく分かった事実の分子基盤などを明らかにするための実験をする予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
金額的に少なく、次年度の予算が前年度より大幅に低いため、次年度で足りなくならないように次年度のために保留した。
|
次年度使用額の使用計画 |
オプトジェネティクスの使い切り光ファイバー単価が40000円近くし、まとめ買いすることで40%オフまで安く出来るため、できるだけ数を確保するためにまとめ買いに使用する。
|