研究課題/領域番号 |
15K01841
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
三嶋 恒子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (90415307)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | AAV9 / アストロサイト / 可塑性 / カルシウム |
研究実績の概要 |
本課題は神経回路の可塑性に伴うアストロサイトの形態およびカルシウムシグナル動態を、時間変化・可塑性誘導の刺激強度の変化との関係性において明らかにすることを目的とする。Arc-dVenus トランスジェニックマウスを利用することで刺激により可塑的変化を起こした神経細胞を可視化・同定し、同時に観測領域内に導入したGFAP プロモータ付のアデノ随伴ウイルスベクターにより、アストロサイトを可視化する。 本年度は、この目的に影響を及ぼす可能性のある2点について確認及び条件検討を行った。 《麻酔・動物週令の影響》可塑性誘導刺激に対し、神経細胞の可塑的変化がしばしば不安定になる。すなわち、dVenus 発現神経細胞がみられないことがある。これが麻酔の影響である可能性が示唆されたので検討した。5-6週令で2時間イソフルラン麻酔(ウイルス導入時に使用する時間)した動物にのほうが、8週令以降で麻酔した動物よりも、可塑性導入刺激に対するdVenus 発現神経細胞が少ない。よって以降ウイルス導入時には8週令以降の動物を使用することとした。 《ウイルスベクター》いずれもGFAPプロモータ付のアデノ随伴ウイルスであるが、発現蛍光タンパクが異なる、アストロサイト形態観測用に2種類(mCherry, memCerulean)、カルシウムシグナル観測用に1種類(RCaMP)を検討した。予備実験の際導入ウイルスの量・種類によりその可塑的変化のレベル(=dVenus 発現神経細胞数)が異なる可能性が示唆された。詳細な形態観察のためには解像度レベルの高い青色蛍光(memCerulean)が望ましいが、赤色蛋白(mCherry)を発現するウイルスを使用した動物のほうが、より可塑的変化を安定して誘導することができる。RCaMPのウイルスについては動作しており、導入動物における安定した可塑的誘導を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
主に機器類の、故障・破損の対応及び研究計画の一部見直しのための予備実験を行う必要があったため、実験計画は遅れているる。 本課題ではGFAP プロモータ付のアデノ随伴ウイルスベクターを利用することで蛍光タンパクを発現させることが必須条件である。このウイルスベクターを、観測ターゲット内に導入することでアストロサイトを可視化する。観測領域は刺激に対する内因性光学シグナルを計測することで決定するが、この際計測に必要な高感度カメラの修理不能な破損および製造中断があったため、同等の感度を持つカメラの選定の必要があった。また、当初のウイルスベクターは本課題計画中の予備実験においては問題なかったが、-80℃の冷凍冷蔵庫における長期保保存期間が長くなったためか、状態が非常に悪くなり使用不可能となった。現在は新たなカメラの選定は済んでおり入手可能であることも確認済み。またウイルスベクターについては、新たなものを再度調整し直し導入のための条件検討もほぼ終了している
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今後の研究の推進方策 |
カルシウムシグナルの変化の観測を中心に行う。可塑性誘導のための刺激の定量化のため、刺激強度を定量化・人工的に制御するための装置の作成を行う。同時に形態変化観測のためのウイルス導入は蛍光タンパクmCherryを発現するもので行うが、予備的なものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの使用機器の破損および新たな検討事項があらわれたことによる、研究計画の遅延のため、購入に至らず。
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次年度使用額の使用計画 |
破損した計測機の代替機購入を予定している。(高感度カメラ一式)
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