研究課題
遺伝子改変マウスの行動解析の結果、情動機能に異常を示す結果が得られるケースは多く、それら原因の多くは扁桃体にあると推測される。しかし、行動データのみでは分子・生理レベルでの機能異常仮説を立てる上で不十分であり、細胞レベルにおける中間表現型の解析系が求められていた。本研究計画は、行動的表現型の表出時に活動する神経細胞のプロファイリングを行い、それを中間表現型として情動制御の分子・生理メカニズムに効率よく迫ることを目的とする。研究期間の初年度は、活動神経の解析に用いるArc遺伝子プロモーター領域の下流に蛍光タンパクVenusを組み込んだTransgenicマウス(Arc-Venus)を用いた実験系・解析系の確立を進めた。特に脳透明化手法の導入により、シグナル/ノイズ比の高い鮮明な解析データを得ることを可能にした。2016年度は、本番となる研究を進めた。扁桃体特異的な神経ペプチドであるGRPの欠損マウスは、一定の環境で過度な恐怖反応を示す。そこで、その恐怖反応時における扁桃体内の活動神経のプロファイリングを進めた。その結果、GRP欠損マウス扁桃体内の限られた領域で、神経活動が極端に落ちていることが判明した。この結果は、その領域の神経活動が過度な恐怖反応を抑制的に制御していることを強く示唆する。研究代表者は、2017年度に、東京大学医科学研究所より東京大学先端科学技術研究センターへ異動した。そのため、2017年度中は研究エフォートが少し低下したが、2018年度にかけて成果の取りまとめを行い、投稿段階に達している。今後、この扁桃体内の一領域の詳細な機能解析を、光遺伝学的手法で進めることを計画している。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Lab Invest.
巻: 98 ページ: 1364-1374
10.1038/s41374-018-0083-y.