研究課題/領域番号 |
15K01849
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
吉村 奈津江 東京工業大学, 精密工学研究所, 准教授 (00581315)
|
研究分担者 |
緒方 洋輔 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, その他部局等, 研究員 (60641355)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ブレイン・コンピュータ・インタフェース / 機能的MRI / 脳波 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
人間がどの音声の発話をイメージしているかを脳活動信号から判別することを目的として、2種の母音の音声を聞かせた後に被験者がその音声をイメージした時の、脳波と核磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging, fMRI)データを取得した。音声をイメージしているか否か、イメージしているとすればどちらの母音の音声をイメージしているかを判別するためには、脳波そのものの信号を用いるよりも、脳波の信号源電流を脳波から推定したデータを用いた方が有意に高い精度で判別できることが確認され、この成果はFrontiers in Neuroscience のNeuroprosthetics section への掲載に採択された (April 2016, Volume 10, Article 175, pp. 1-15, doi: 10.3389/fnins.2016.00175)。 10名のデータを用いた結果、各個人でパラメータを最適化した場合には、平均で58%程度(3択課題のためチャンスレベルは33.3%)の判別率が得られ、汎化性を考慮した共通のパラメータを用いた場合でも50%弱の精度が得られた。さらに、信号源電流を使った場合には、音声をイメージしているか否か、どちらの母音をイメージしているか、に関する情報がどこの領域の信号源で処理されている可能性があるかを調べることができ、各領域の時系列的な相関を調べることで、発話イメージにおける脳活動処理の流れを可視化できる可能性も示された。具体的には、言語に関連する領域が多く認められ、言語関連の領域と運動前野には負の相関がある可能性が示唆された。これらの傾向は、脳波そのものの信号を用いた場合には認められなかったことから、信号源電流推定法を用いることの意義を、工学的だけでなく科学的側面からも示唆する結果となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2母音の判別は、昨年度で終了した本研究課題の前身課題で得られた成果であるため、論文の採択には時間を要したが、既に2母音以上の判別にも取り組んでいる。また、想像した音声を出力できるインタフェースの構築という工学的な目的以外にも、発話イメージ時の脳活動信号の流れを可視化できる可能性を示したという点を加味し、おおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
子音の判別も含め、2母音以上の判別に取り組む。また、発話イメージにおける脳活動信号の流れの可視化についても取り組む。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新しい設備購入を予定していたが、既存の設備で現段階で十分な性能が出たため、新規に購入を行わなかった。また、論文の採択に遅れが生じ、掲載料の払い込みが次年度になった。
|
次年度使用額の使用計画 |
上記の掲載料の払い込み、および、次年度は研究を発展させるために機能的MRI実験を数多く行うことから、主にMRI装置使用料の支払いに使用する計画である。
|