研究課題/領域番号 |
15K01858
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
湯山 英子 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 研究員 (70644748)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 東アジア / 経済史 / 地域研究 / 漆貿易 / アジア間分業 / 通商ネットワーク / 仏領インドシナ / 台湾 |
研究実績の概要 |
まず初年度は、本研究の基礎となる日本の漆生産および漆貿易に関する資料収集に努めた。研究の主題は、アジア地域間分業における、それぞれの地域の担い手に着目し、生産と流通の展開過程を明らかにすることである。対象地域は、日本、中国、仏領インドシナ、台湾、朝鮮であり、これら東アジア特有の産品である漆(液)に着目している。近代アジアの地域間分業において、漆を通してその一側面を提示するのが本研究の目的である。 日本の漆については、2つのアプローチを試みた。1つは漆貿易商から、2つ目は沖縄の漆と東南アジアや中国との関係である。1つ目の漆貿易商については、代表的存在である斎藤漆店をメインに、その進出の経緯や海外の事業展開を分析した。さらに、斎藤漆店よりは後発になるが、中国と仏領インドシナへ事業展開をしていた田島漆店(和歌山県海南市)の調査を開始した。分析及び追加調査はこれからである。また2つ目の沖縄に関しては、当初の計画では想定していなかったが、日本と台湾や中国との関係性を見る上で、欠かせないと判断した。沖縄の独自性、アジア交易との関係性を踏まえて上で、日本とアジア地域間貿易の全体像を描きたいと考えている。 また、これまでの調査の集約および分析、さらに研究の理論的枠組み・方法論の見直しを行い、東アジア地域の通商ネットワークや現地社会との連関性にも視野を広げている。各国立文書館や省レベルの文書館などからの資料収集および面談調査などにも着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主たる研究課題は、日本の漆貿易とアジアとの関係を解明するための文献調査とした。そのための(1)国内文献、聞取り調査、(2)海外文献、聞取り調査、であるが、(1)は概ね順調に進んでいる。(2)については、対象者や機関との関係性の構築、調査依頼などを通して事前準備と位置づけた。 (1)国内文献調査は、本研究の基礎となる日本の漆生産および漆貿易に関する資料収集に努めた。①貿易商、②沖縄の漆についての資料調査を中心に行った。①の貿易商については、和歌山県立文書館の田島漆店関係文書を入手することが出来た。また、関係者への聞取り調査が可能であることが分かった。②沖縄の漆については、県立図書館、浦添市美術館、沖縄県立芸術大学、漆工芸家など、関係機関および専門家から情報収集を行った。専門家から紹介を受けた文献は入手した。それを元に分析は進めている。また、海外での情報収集と研究交流を台湾で行った。 以上のように、分析対象が広がったものの、まだ十分とは言えず、聞取り調査および依頼は次年度に回した。但し、全体としては、研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後、引き続き、①資料収集、②聞取り調査、を予定している。資料収集については、海外の資料収集に着手する。研究交流・関係を構築してきた台湾調査を継続し、さらに韓国とベトナム調査に着手する。また、これまで入手した資料の集約・分析を進める。中間報告として、研究ノートを研究誌に発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費に関しては、該当年度の前半は学会発表及び国際シンポジウム発表の準備に専念したため、後半に調査を行った。そのため、国内調査が沖縄のみ1回、台湾での調査および情報収集1回となった。物品に関しては、既存の設備や文献を利用したが、次年度に必要な設備や文献があるため、それに回す予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
旅費に関しては、漆貿易商の調査のため国内調査(和歌山、福井、大阪、東京)を実施する。また、平成28年度の旅費と合算して可能な限り海外調査(ベトナム、台湾、韓国)を考えている。物品では、文献の集約・分析のためにパソコンを購入する予定である。
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