4月~7月は前年度までの収集データの整理、学会での関連研究の論点把握につとめた。8月中旬~9月上旬、ケニアの地方都市エルドレットにて参与観察とインタビュー調査をおこない、若年高学歴女性の(1)結婚(2)母村家族内での活動についての事例データを得た。 (1)10人のうち2人が、2017年夏からの1年間に結婚し、結婚を予定していた1人は破局した。かれら3人から結婚(破局)にいたる経緯、家族形成のビジョンについてインタビュー調査をおこなった。siblingsのなかでも姉妹どうしはお互いの(教会式)結婚式に熱心に出資したこと、結婚後もキャリアアップ志向が持続するが、結婚相手とはかならずしも共有していないことが分かった。 (2)ある姉妹は互助講式の共同出資で積立てをおこないながら、母村家族敷地内にコンクリ基礎の干煉瓦造り家屋(‘permanent’)の建設をすすめていた。これは第1には、結婚する姉妹の事前儀礼(‘introduction’)会場建設としてであり、第2には、近隣と比しても簡素な土壁の小屋で長年過ごしてきたのちの教育の成果顕示の意味をもち、第3には、母村家族における自らの発言力維持という家族内政治の含意がある。 9月中旬に国際学会「Nordic Africa Days 2018: African Mobilities」(ウプサラ大学)で口頭発表した。10月以降は、これまでに現地調査で得たデータの整理につとめ、論文や書籍の一部として公刊準備中である。 最終年度である今年度は、おもに女性に焦点化した調査をおこなった。このことにより事業期間全体を通じ、高学歴若年層の現状について、「延長された独身時代」における地元農村と地方都市の広がりのなかでのかれらの生計維持活動と社会関係の維持との見取り図を描くこと、そしてその男女別の実践の変異をみることができた。
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