研究課題/領域番号 |
15K01869
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
戸部 健 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (20515407)
|
研究分担者 |
今村 直樹 熊本大学, 永青文庫研究センター, 准教授 (50570727)
吉田 建一郎 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (60580826)
長沼 さやか 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (80535568)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 茶 / 茶業 / 茶文化 / 日本 / アジア / 中国 / ロシア / イギリス |
研究実績の概要 |
平成29年度は最終年度ということで、研究成果の一部を収録した報告書を『アジア研究』別冊7のかたちで刊行した。それぞれの研究の内容は以下のとおりである。 研究協力者の岡村(日本史学)は、江戸後期静岡における茶生産者の流通・消費認識のありようを文政茶一件(1824〔文政七〕年)という事件での動きを通して明らかにした。また、1738(元文三)年に永谷宗円が完成させた宇治製法という新しい製茶法の普及についても検討し、幕末以前の駿河国ではそれがまだ一般的でなかったことを実証した。 その宇治製法を早くから導入していたのが熊本藩であった。今村(日本史学)は、1840年代と70年代の熊本藩(県)における茶生産量を比較し、30年余りの間に生産量が大幅に増えていることを明らかにした。熊本茶は幕末の長崎開港を受けて、海外への輸出が試みられたが、その背景には輸出向けの製茶法の習得を行う篤農家の存在や、茶産業を積極的に推進する熊本藩の姿勢があったとした。 その後、日本茶の海外輸出は静岡茶を中心に隆盛を極めるが、これまでの研究においてはアメリカへの輸出状況に関する研究が圧倒的に多かった。そのなかで吉田(東洋史学)は、1920~30年代における日本茶のソ連への輸出について検討した。ただし、日ソ間の茶貿易を見る上で実は中国の存在が重要であることを史料に基づいて提起している点が特徴的である。 日本茶がソ連に輸出されたきっかけは、中国を拠点とするイギリス系茶貿易商社であるハリソンズ・キング・アンド・アーウィン社が日本とソ連の茶業界を仲介したことだった。そこで戸部(東洋史学)は、世界史的視野から中国茶や日本茶を捉える上での、ハリソンズ・キング社の文書の可能性について検討した。 また、このほかに近代中国茶業関係資料の目録(暫定版)作成にも取り組んだ。ウェブ上での公開に向けて準備を進めている。
|